横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

棟方志功展@東京国立近代美術館

 

 以前、青森の棟方志功記念館に行ってみてとても素晴らしかったので、東京国立近代美術館の「棟方志功展」に行ってきた。生誕120年を記念した巡回展。

 

www.munakata-shiko2023.jp

 

 当初、棟方は洋画家を目指して青森から上京したが、川上澄夫の版画に出会い、版画家に転向する。民芸運動とも出会い、影響を受けていく。

 

 戦時中は富山へ疎開し、都内の家は空襲に遭い、それまでの作品の版木をすべて焼失する。別の版画家の話になってしまうが、大山崎山荘美術館で加賀正太郎の版画を見た時に、「戦時中は燃料がなかったため、版木を燃やした」という解説を読んだことがある。事情は異なるが、版画家にとって恐ろしいことだ。
 富山で過ごした棟方志功も物資不足に悩み、大きな板が手に入らないので、小さな板に彫るようにしたとか。版画の代わりに屏風に絵を描くなど、別の形で創造性を発揮した。

 

 

 やがて終戦を迎え、敗戦国日本は国際社会に復帰するうえで、文化芸術というソフトパワーを外交に利用する。そこで棟方志功に白羽の矢が立ち、欧米各地を訪れる。棟方といえば「わだばゴッホになる」の言葉が有名だが、念願かなって、ゴッホゆかりの地も訪れたという。

 


 久しぶりにまとまった数の作品を見たが、ものすごく力強いエネルギーを感じた。この展覧会も写真撮影OKだったので驚いた。書籍の表紙、挿絵に使われた作品も多かった。

 会場で英語が聞こえ「ん?」と思ったら、学芸員が海外からの研究者を案内していた。さすが、「世界のムナカタ」。

 せっかく久しぶりに近代美術館に来たので、常設展も見学した。東山魁夷の作品などが展示されていて見ごたえがあった。さすがに歩き疲れてしまい、お昼は美術館のレストランでとろうと思ったら、こちらは「世界のミクニ」だったので気軽に入れん。コーヒースタンドで済ませた。