「ボヘミアン・ラプソディ」Bohemian Rhapsody
監督:ブライアン・シンガー/デクスター・フレッチャー
主演:ラミ・マレック
2018年 イギリス/アメリカ映画
英国のバンド「クイーン」の伝記映画。1980年代に英国ロックをとっぷり聴いていた元洋楽小僧としては、公開後すぐに見に行くべきなんだろうけれど、レビューを見ると海外でも日本でも賛否両論で、見に行くかかなり迷った。
賛否両論の「賛」は「クイーンの音楽、ライブエイドの場面が素晴らしい」というもので、「否」は「ストーリーを盛り上げるために史実をねじ曲げるのはけしからん」というもの。
「はてなブログ」の映画レビューブログを収集したサイト「ホットチリレビューズ」でも、色々な意見を読んだ(ちなみに当ブログも「ホットチリレビューズ」で収集されている)。特に、私より少し上の世代と思われる、英国ロックというかクイーンに詳しい音楽通の書いたものは、辛口だったような気がする。
1980年代半ば、よく覚えているのはフレディがソロ活動をしていたことで、日本でもノエビアのCMで「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」が使われていた。バンドメンバーがソロ活動を始めると「すわ、解散か?」と騒がれるが、クイーンもライブエイドがなければ、本当に解散してもおかしくなかったという。
そして映画の山場となるライブエイドもリアルタイムで見ている(時差があり、眠い目をこすりながら起きていた)。クイーンとフレディ・マーキュリーに良いイメージもあるし、ベスト盤も持っている。映画を見てがっかりするのは避けたい。
しばらく迷っていたのだが、思いきって見に行くことにした。
基本的に伝記映画は「そっくりさんコンテスト」である必要はないと思っているが、フレディ役のラミ・マレックの演技には良い意味で驚かされた。メイクでかなり似せているが、本人より若い分、ライブエイドの頃の姿(フレディは40近い)はさわやかな印象。ただ、舞台上のパフォーマンスを見たら「これは似てる!」。スタンドごとマイクを持つ仕草、舞台上でターンする時のキレ、そういう動きの一切合切がフレディそのものなのだ。
でも、もっと驚いたのがクイーンのメンバーである。出かける前にCDのジャケット写真を見たのだが、特にブライアン・メイ役のグウィリム・リーは、ブライアン本人からもお墨付きが出たんじゃなかろうか。そのぐらい似ていた。
クイーンのメンバーを演じきるため、若手俳優4人が尋常でない努力をしたことに脱帽。楽器を演奏する場面とか、猛練習したと思う。
さて、気になる史実との相違だけれど、事前に「ここが違う」という記事を読んだおかげか「後で訂正すればいいや」と思ったのと、時系列に違いはあれど、また脚色・演出が加わっているだろうけれども、実際に起きたこと(名曲の誕生、病気など)には変わりないだろうと思えた。あまりにズレてたら、音楽プロデューサーとして参加していたブライアン・メイとロジャー・テイラーがさすがに意見するだろうし。
不思議だったのが、フレディの声だ。音源が存在する、完成後の曲を演奏するシーンは分かるけれど、作曲中のところとか、さすがにフレディの肉声は残ってないはず。どこから持ってきたのか?そう思っていたら、謎が解けた。
フレディと歌声が似ている歌手マーク・マーテルが「映画ではフレディとラミ、そして僕の声をミックスしたものが使われることになるよ。どれが誰だかわからないような形でね」とインタビューで語っていたのだ。
映画を見た後、ライブエイドの動画を探して視聴した。クイーンの演奏だけでなく、当時好きだったアーティストの動画をはしごして見ていたら、なつかしくてたまらん。ただ、33年も前のことなので、お目当てのデュラン・デュランが演奏したこと以外、当時のことははっきり思い出せない。なぜなら――。
ライブエイドのメイン会場は、英ロンドンと米フィラデルフィアの2か所で、その模様が日本にも生中継された。ところが日本でも協賛・開催することになり、日本国内では海外中継を中断して、邦楽アーティストの演奏が放送されたのだ。詳細がWikipediaに出てる。
今読むと、なかなかヒドイな、日本のテレビ局。
ともあれ、映画を見た後の記憶が残っている状態で、改めてライブエイドのクイーンの演奏シーンを動画で見たら、再現度の高さにこれまた驚いた。ピアノの上に置いた紙コップとか、ウェンブリー・スタジアムの大観衆とか。ライブエイドを見たことある人もない人も、迫力あるパフォーマンスに感動するだろう。
動画はしごをしたライブエイドの出演者の中にデヴィッド・ボウイやジョージ・マイケルがいて、フレディともども、今はもう全員が故人であることに気づいた。天国ではにぎやかなセッションが繰り広げられているだろうな。
【追記】
「クイーン」メンバーのロジャー・テイラーとブライアン・メイのインタビュー。この映画についてどう思っているのか、彼らの感想が聞けて良かった。
いくつか映画レビューを読んだ中で、こちらのサイトが詳しかった。映画と史実で何が違うのか確認するのにも良い。