以前こちらの記事で、ベテラン歌手ポール・アンカがロックをジャズ風にカバーした曲を紹介した。
ポール・アンカはアルバムを出しており、上記のオアシス以外にも色々なロックとポップスをカバーしている。こういう音楽ジャンルを超えたアレンジは私も大好きで、ほかの曲も「いつか聴こう」と思っていた。
最近ようやく視聴してみて、良い意味で驚いた。元の曲を知っている人はなおさらだと思う。2曲選んで紹介する。
1曲目は、ペット・ショップ・ボーイズの「It's a Sin」(邦題は好きじゃない……)。
英「ガーディアン」紙のインタビューや、著書で「"sin"(罪)とは同性愛のことではない」「10代の少年が婚外で、性的なことをすること」だと、作詞のニール・テナントは述べている。カトリックの学校で教えられてきたことへの反発が現れている。そうは言っても昨年、ドラマ「IT’S A SIN 哀しみの天使たち」が発表され、1980年代のエイズと同性愛が描かれるので、まんざら無関係ではなさそう。”同性愛だけ”ではないよということかな。
それに対して、このポール・アンカのカバー・バージョンはバラード調で、ぐんと大人の世界になり、あたかも禁じられた関係の男女の恋愛のように聞こえてしまう(!)。原曲にあった最後のラテン語の祈りはもちろん、入っていない。
もう1曲は、ボン・ジョヴィの「It's My Life」www.youtube.com
ボン・ジョヴィの方は、バリバリのロック。若者が拳を振り上げているような感じ。
対して、ポール・アンカのカバー・バージョンは、しっかりスウィングしている! 同じ歌詞なのに、やっぱり違う内容に聞こえてしまう。大人の男性が「これは僕の人生なのさ!」と言い切っている。
どちらの歌詞も「誰が」主人公なのか、「どんな」状況なのかで、訳し方が変わってきそう。
アルバムには、1980年代にデュラン・デュランと並んで好きだったスパンドゥー・バレエの「True」も入っていたが、元がスローテンポな曲なので、バラードになってもあまり違和感がなかった。
いちばんぶっ飛んだのは、ザ・キュアの「The Lovecats」だろうか。アップテンポな音楽で、PVの映像も込みで超訳するなら「猫ちゃん、猫ちゃん♡」な雰囲気。しかし、ポール・アンカ様にかかるとあら不思議、落ち着いたバラードに変身しているではないか! 興味のある方は是非、動画を検索して比較してみてほしい。
アルバム「ロック・スウィングス」の解説は、こちらが詳しい。
https://enjoyjazzlife.com/rock-swings