横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

ロックハート家とエドモン・ロカール

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 群馬県に「大理石村ロックハート城」というテーマパークがある。某ネズミの国のシンデレラ城と違い、本物の19世紀英国のお城がある。

 

 城のかつての名を「Milton Lockhart House」という。解体してスコットランドからシベリア鉄道経由で運び、日本に移築された。何らかの事情で売りに出たのだろう。俳優の津川雅彦さんが購入し、現在のようなテーマパークが誕生した。


 さて、現在、フランスの犯罪学者エドモン・ロカールに関する本(フランス語)を読んでいるのだが、ご先祖の話が出てきた。

 この一族のルーツはスコットランドにあり、先祖にはスコットランド王ロバート1世に仕えたサイモン・ロックハート(Simon Lockhart)という騎士がいた。十字軍遠征の前に、主君のロバート1世が亡くなり、ロックハートたちはその心臓を箱に入れて聖地へ運ぼうとした。途中、グラナダまで到達したところでムーア人と戦い、エルサレムまで到達できなかった。主君の心臓はスコットランドまで持ち帰られた。箱の鍵を持っていたのがサイモン・ロックハートだった。家名は「Lockheart」とも書く。文字通り、心臓(heart)が入った箱の鍵(lock)だ。

 子孫のうちフランスに渡った者が、フランス風の「Locard」に名前を変えた。仏語での発音は「ロカール」になる。エドモン・ロカールは、「ロックハート城」のロックハート一族の末裔だったのだ。


 「ロックハート城」は何年か前に訪れたことがある。敷地内にグラナダ版「シャーロック・ホームズの冒険」の撮影で使われた馬車が展示してあるからだ。馬車を見て、ホームズ役のジェレミー・ブレットに思いをはせたが、どういう事情でロックハート城というか日本に持ってくることになったのか、さっぱり分からない。公式サイトを見ても何も書かれていない。

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