横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

ジャック・ガンブラン特集2  「クリクリのいた夏」ほか

 前回(こちら)に引き続き、ジャック・ガンブランの映画を紹介。今回は、ブレイクを果たした頃の作品です。キャストでは2番目だけど、ほぼ主役。

「クリクリのいた夏」Les Enfants du marais
監督:ジャン・ベッケル
出演:ジャック・ヴィユレ、ジャック・ガンブランアンドレ・デュソリエ
1999年 フランス映画 

クリクリのいた夏 [DVD]

クリクリのいた夏 [DVD]

 

  <あらすじ>
 1932年頃のフランスの田舎。第一次大戦時の心の傷を抱えたガリス(ジャック・ガンブラン)は、隣人のリトン(ジャック・ヴィユレ)と親しくなる。リトンは女房に逃げられ、娘のクリクリを一人で育てていた。裕福な紳士アメデ(アンドレ・デュソリエ)、くず鉄拾いから財を成した老人ペペらと、沼地で自由な時間を過ごす。

 ガリスとリトンは、沼地(タイトルのmarais)のスズランの花や食用カエルを街へ売りに行き、雑用を引き受けたりして生計をたてる。裕福とは言い難いが、自由な彼らの暮らしぶりに、ペペは自分の若い頃を思い出す。クリクリは、ペペの孫息子ピエロと仲良くなる。

 その頃、ガリスはマリー(イザベル・カレ)という若い女性と知り合う。いつかここを離れようという気持ちが沸いてくるが――。


 本作はフランスで200万人を動員する大ヒットとなった。脚本がミステリ作家のセバスチアン・ジャプリゾ(『シンデレラの罠』など)だったり、サッカー選手から俳優に転向したエリック・カントナがボクサー役だったり、何気に豪華。

 ガリスがある屋敷の使用人と言葉を交わした時に「ヴェルダン」「ソンム」という言葉が出てくるが、いずれも第一次大戦の激戦地。ガリスが心に傷を抱えている理由が、そこからうかがえる。

 ”クリクリ”はクリスティーヌの愛称なのかな? 最後まで本名は分からずじまい。映画の最後に、物語の舞台となった沼地が埋め立てられ、現在はショッピングセンターに変身したことを、老女となったクリクリが回想する。

 もう一人の主人公リトンを演じるジャック・ヴィユレは、「奇人たちの晩餐会」でも憎めないおバカさんを好演してた。50代の若さで亡くなっているので、この2作は貴重。マリー役のイザベル・カレとは「Holly Lola」で、養子縁組を求める夫婦役で共演している。

 


「嘘の心」Au cœur du mensonge
監督:クロード・シャブロル
出演:サンドリーヌ・ボネールジャック・ガンブランヴァレリア・ブルーニ=テデスキ
1999年 フランス映画 

嘘の心 [DVD]

嘘の心 [DVD]

 

 <あらすじ>
 フランス、ブルターニュ。看護師ヴィヴィアンヌ(サンドリーヌ・ボネール)と画家ルネ(ジャック・ガンブラン)夫婦の住む街で、少女が殺害される。足が不自由で、絵画教室で子供たちに絵を教えているルネに、新任の女警部ルサージュ(ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ)は容疑をかける。殺された少女は絵画教室の生徒だった。

 夫婦仲の冷めていたところへ、ヴィヴィアンヌは再会した人気作家デモに心惹かれていく。オペラを見に行こうとルネを誘うが、気乗りしない夫に断られる。一人で観劇に行った劇場で、やはりオペラを見に来ていたデモに会う。ひょんなことからルネは妻の嘘に気づき、疑いが芽生える。

 事件は解決しないまま、やがて第2の殺人事件が起こり――。


 クロード・シャブロルお得意の心理サスペンス。
 何を考えているか分からないミステリアスな男をジャック・ガンブランが好演。経済的にも精神的にも夫を支えながら、別の快活な男に惹かれるヴィヴィアンヌとの間に溝ができて、事件の解決後も、恐らく溝は深いままだろうと予想される。殺人事件とは別の部分で怖い。

 女警部役のヴァレリア・ブルーニ=テデスキは、この後色々な作品に出演して、いまや大女優に。良いキャスティングかも。

 


マドモワゼル  24時間の恋人」Mademoiselle
監督:フィリップ・リオレ
出演:サンドリーヌ・ボネールジャック・ガンブラン
2001年 フランス映画 

マドモワゼル −24時間の恋人− [DVD]

マドモワゼル −24時間の恋人− [DVD]

 

 <あらすじ>
 製薬会社で働くクレール(サンドリーヌ・ボネール)は夫と2人の子供がいる。会社の表彰イベントのために滞在した街で、旅回りの劇団と知り合う。イベントに参加していた劇団のメンバーのピエール(ジャック・ガンブラン)とは、街のドラッグストアで偶然出会っていた。

 退職する同僚への記念品である灯台の模型を、その同僚がホテルに忘れてしまう。それを届けるため、クレールは帰りの列車に乗り遅れ、劇団の車に乗せてもらうことに。彼らの次の仕事先である、結婚式にもついて行った。パーティーでは即興劇として、灯台をテーマにした物語を語り始める。

 クレールとピエールは灯台の物語を通じて、離れがたくなってしまう。


 「嘘の心」では冷めた関係の夫婦を演じたサンドリーヌ・ボネールジャック・ガンブランが、一転して、偶然出会った大人の男女の恋を演じる。空気感がまるで前作と違う。続けて見るなら「嘘の心」を先に見た方が良いかも。

 ちなみに、作中出てくる灯台をモチーフに、フィリップ・リオレ監督は「灯台守の恋」を撮った。ヒロイン役は、これまたサンドリーヌ・ボネール

 渋谷の文化村で見たんだけど、ロビーに雑誌のインタビューやレビューが貼ってあった。雑誌「GQ」で、ジャック・ガンブラン様がエルメスとかハイブランドファッションに身を固めていて、長身と長いおみ足がそれはそれはカッコ良く、マダム……いや、心はマドモワゼルに戻ったご婦人方が群がっていた。今思えばこの雑誌、探し出して買っておくんだった!! 女優と違って、実力派男優はあまりこーいうモード系写真なんて撮らないもんね。後にも先にも、ジャック・ガンブランのカッコ良さが前面に出た、数少ない作品。

 


 以下、余談。
フランス映画祭」HPを確認すると、2001年には「マドモアゼル」で、2002年には「レセ・パセ」で来日していたのだ。ああ、会社休んで行けば良かった……!!サインをもらってさ。んでもって、できればフランス語でご挨拶してさ(そういう時のために留学後もずっとフランス語を磨いているんだよ!)

 ちなみに、その時手元に持っていて、もし会えたらサインして貰おうと思ったのは、モーリス・ルブランの『謎の家』朗読CDである。海外のアマゾンで俳優名を検索すると、出演映画だけでなく、朗読CDがヒットすることも多い。

f:id:Iledelalphabet:20171031194527j:plain

 

iledelalphabet.hatenablog.com

iledelalphabet.hatenablog.com

iledelalphabet.hatenablog.com