横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

父と子のキャンプ・セラピー

「父と子のキャンプ・セラピー」Père fils thérapie !
監督:エミル・ゴードロー
出演:リシャール・ベリジャック・ガンブラン
2016年

<あらすじ>
 警官のジャック・ラロッシュ(リシャール・ベリ)と、同じく警官である息子マークは犬猿の仲。同じチームに配属され、一緒に現場に出ても親子ケンカが絶えない。
 ある時、2人揃って上司に呼び出される。潜入捜査中の警官が人質に取られ、マフィアのブラッチはその警官と自身の息子(収監中)の人質交換を提案する。ブラッチの弁護士シャルル・ペローネ(ジャック・ガンブラン)を説得する必要があった。
 シャルル・ペローネには弱点があった。息子のファブリスと仲が悪く、見かねた妻の差し金で、父子関係を修復するキャンプ・セラピーに参加することになったのだ。ジャックとマークのラロッシュ親子も、ペローネに接近するためセラピーに参加する――。

 

 ジャック・ガンブランの出演作で、「そういえば、未見だったなー」と思い、Amazonプライムで視聴。なかなか面白かった。

 ほとんどの父子が問題を抱え、関係改善のためにキャンプ・セラピーに参加するが、一組だけ異様に仲の良いヘンな父子が参加する。宿泊は父親のグループ、息子のグループに分かれ、それぞれ同世代で盛り上がる。
 思春期ならともかく、息子も大人なので、対立してもどちらも譲らない。
 こんなセラピー、欧米で実在するんだろうか!?

 いくつになっても息子を子供扱いする父親がいけないのだが、困った父親たちの中でも、シャルル・ペローネはダントツに厄介。メディアに出て顔が知れてるので、キャンプ初日の夕食で「もうすぐ裁判なのに、キャンプなんか来てて大丈夫か?」と言われたり。任務のため、親しくなろうとするジャック・ラロッシュ(警官であることは隠し、不動産屋に扮する)に「あんたは楽な仕事でいいな」と毒を吐く(この時のリシャール・ベリの表情が絶妙!)。
 父子でアクティビティーに挑戦するのだが、他の父親は泥相撲でもダンスでも参加するのに、シャルル・ペローネだけは頑なに拒否し、ファブリスは皆に同情される。そのぶん、離れて踊るシャルルの様子に、「最高に不器用な父親」ぶりが現れるのだが。


 キャンプ・セラピーを主宰するのは精神分析医のジルベルト(ジュリー・フェリエ)。ファブリスの使ったロープが故意に切られていたことが分かり、ジャック・ラロッシュは彼女に「俺たちは警官だ」と打ち明けるのだが、その時の彼女の狼狽ぶりが「精神分析医あるある」みたいで可笑しい。ショックを受けた自分に声をかけて励まし、立ち直ろうとするのだ。

 マークは捜査で、元カノである同僚ジュリーに再会するが、未練たらたら。彼女の言う「肉が足りない」って何だろう。

 ジャック・ガンブランて、「息子を持つ不器用な父親」の役が多いなあ。「シュヴァルの理想宮」とか「グレート・デイズ 夢に挑んだ父と子」とか。当人は娘さんがいて、息子さんはいないようだけど。


 この映画は最初にカナダ・ケベックで2009年に「De père en flic」の題で公開され、それをフランスでリメイクしたもの。カナダ版はこんな感じ。フランス版のマークは精悍な感じだが、カナダ版はベビーフェイス。