横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

ロスト・キング 500年越しの運命

「ロスト・キング 500年越しの運命」The Lost King
監督:スティーブン・フリアーズ
出演:サリー・ホーキンス、スティーブ・クーガン


<あらすじ>
 フィリッパ・ラングレーは職場で上司に理不尽な評価を受けるも、別居中の夫からは生活費のために仕事を続けるよう促され、苦悩の日々を過ごしていた。ある日、息子の付き添いでシェイクスピアの「リチャード三世」を観劇したことで、彼女の人生は一変する。悪名高き王・リチャード三世も自分と同じように不当な扱いを受けてきたのではないかと疑問を抱いたフィリッパは、彼の真の姿を探し求め、歴史研究に没頭していく――。

 

 2012年にリチャード三世の遺骨が発見された実話に基づく作品。
 映画の宣伝で主人公フィリッパを「主婦」と呼んでいたけれど、とんでもない。病気で休職中の有能キャリアウーマンだよ。

 映画に出てきたように、英国には「リチャード三世協会」という団体があり、フィリッパ・ラングレーのインタビューによると、日本にも会員がいるとか。会員というかリチャード三世のファンはリカーディアンと呼ばれるとな。なんだかシャーロキアンを彷彿とさせるなあ。

 フィリッパは途中から入会したわけだけれど、1924年に創設された歴史ある団体で、先輩たちは誰も同じことを考えなかったのか?と疑問に思った。
 だが、Wikipediaによると、「この辺が怪しいのでは?」という仮説はあったものの、実際に発掘調査までは行ってこなかったらしい。費用の問題と、フィリッパが直面したように、役所や研究者ら各方面を動かし、協力を仰ぐまでものすごい労力を要したので、アイデアはあってもなかなか実行できなかったのだろう。クラウドファンディングという資金調達手段がある現代だからこそ、実現できたのかもしれない。

ja.wikipedia.org

 スティーブ・クーガン(脚本や製作も兼任)演じる主人公の元夫、ものすごくいい人。対して、レスター大学のえげつないこと。発掘に協力した考古学者が解雇されたり、予算が厳しかったのか? 大学の名を挙げるために手段を選ばず。もっとも、フィリッパが本を書いたことで、さらに映画にもなったことで、お手柄横取りがバレてしまったけれど。


 フィリッパはリチャード三世の発掘と再評価という目標を見つけた。今年見た映画「ドリーム・ホース」(こちら)の中年女性ジャンを思い出してしまった。「朝起きたときにワクワクするものが欲しい」と、共同馬主になるのだ。ワクワクするものがあると、人生楽しいよね。


 昔読んだミステリ。やはりリチャード三世について「本当に悪人だったのか?」と投げかけている。