横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

モン・サン=ミシェルの修道女 四季の食事とていねいな暮らし

『モン・サン=ミシェルの修道女 四季の食事とていねいな暮らし』
Mont Saint-Michel, à la table des sœurs
ローランス・デュ・ティリー著/松岡由希子 監修/グラフィック社

 

 フランス・ノルマンディー地方にあるモン・サン=ミシェルは、人気の観光地であると同時に、島内に修道院がある。なんと、女子修道院では「リトリート」といって一般客をもてなすのだという。修道女らの作った手料理を皆で頂くのだ。

 日本でいうと、高野山の宿坊みたいなものだろうか。人里離れた寺院に宿泊し、精進料理を頂き、早朝のお勤めに参加する。

 著者はコロナ禍を経て「おこもりしたい」と考え、かねてから「リトリート」を受け入れていたモン・サン=ミシェル修道院へ。そこで出会った料理が素晴らしく、「レシピを教えてほしい」と声をかけたのが本書の誕生へつながった。

 出てくる料理、デザートがどれも美味しそう。食材は地元の生産者からの寄付と、島の段々畑で育てた野菜、ハーブ、果物。

 ええっ、あの傾斜が急なところに畑があったの!?ヒーヒー言いながら歩いた道の向こう側に、こんな場所があったのか。
 

 料理の写真だけではない。観光客の入らない礼拝堂、畑仕事をするシスターたちの姿、干潮の時には島の外へ降りて散歩するシスターたち(楽しそう)の写真も載っている。そして何より、四季ごとに多様な表情を見せるモン・サン=ミシェルと湾の景色。

フィガロ」誌の著者インタビュー。シスターたちの邪魔をしないよう、まさか、著者がスマホで写真を撮っていたとは! てっきりカメラマンが機材を持ち込んだのかと思っていた。

madamefigaro.jp


 この豊かで穏やかな雰囲気、どこかで見たなあ。
 そうだ。NHK Eテレの「やまと尼寺 精進日記」だ!

 奈良県音羽山の上にある観音寺で、事前に申し込んでおくと精進料理が頂けるのだ。女性の住職がお手伝いの人達と一緒に、地元や敷地内で採れた季節の食材を使って、それはそれは見事な料理を作るのだ。
 お寺まで麓から上っていくのが大変らしい(モン・サン=ミシェルと似ている)。

 番組が生まれたのも、都会での仕事に疲れた女性ディレクターが観音寺にお邪魔したのがそもそもの始まりだった。なんだか本書の誕生と似ているなあ。

 


 以下、昔話。
 モン・サン=ミシェルは2回行ったことがある。
 1回目は大学の卒業旅行で2月だか3月に。ノルマンディーの小さな村に泊まり、翌朝ローカルバスで島に向かった。バスが進むにつれて、どんどん”あの”モン・サン=ミシェルが近づいてくる。ものすごく興奮したっけ。覚えていないけれど、たぶん昼食は名物のオムレツを食べたと思う。
 2回目は留学の時に、日本から観光旅行でやってきた友人と一緒に。パリに泊まり、日帰りバスツアーで向かった。早朝出発して、夜遅くに帰る。長距離なので、バスの運転手さんが2人いた。日本人ガイドは、パリ在住で通訳やらガイドやらの仕事をしている男性。
 ツアーなので、レストランも予約済。有無を言わさず、オムレツ。友人が「ランチで飲んだシードル買って帰りたいな」と言うので土産店で探すも、大きな瓶しか売っていない。当時は、日本ではなかなかシードルを入手できなかったのだ。
 この時は9月で、ちょうど干潮だったので、下まで降りて歩いたなあ。
 

【関連記事】

iledelarchitecture.hatenadiary.jp