横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

ディリリとパリの時間旅行

「ディリリとパリの時間旅行」Dilili à Paris

監督:ミシェル・オスロ

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鬼才ミシェル・オスロ監督待望の新作は、ベル・エポックのパリの物語。
ニューカレドニアからやってきた主人公ディリリが、パリで出会った最初の友人オレルとともに、誘拐事件の謎を解いていく。エッフェル塔オペラ座ヴァンドーム広場など美しいパリを舞台に、事件解決にキュリー夫人ピカソロートレックサラ・ベルナールら、この時代を彩った天才たちが協力する。
フランス映画祭HPより)

 
 一言で表現すれば、この作品は少女たちだけでなく、大人の女性たちも解放し、応援する映画。

 邦題で「時間旅行」と呼ぶだけあり、ベル・エポック当時のパリの街並みを眺められ、観客は時間旅行しているよう。街を移動する手段が自転車というのがまた良い。

 

 ミシェル・オスロ監督は、「キリクと魔女」「夜のとばりの物語」などで知られる。歌姫エマ・カルヴェ役で、歌手のナタリー・デセイが出演。オペラ座の地下湖で白鳥の船に乗って歌っているのは、もしや「オペラ座の怪人」の真似か?

 

 登場するベル・エポック期の有名人が、とにかく豪華! ミュシャの描いたサラ・ベルナールのポスターが街中に貼られているが、やがてディリリはサラ本人にも会う。まだ新しいエッフェル塔に登れば、設計したエッフェル本人も登場。

 楽屋にいる作家コレットと遭遇し、映画「コレット」(こちら)で見たように、「これから舞台でエジプトの踊りを披露するの」と言う。さらに、「夫名義で小説を発表してきたけど、もうやらない」という台詞も! 

 エマ・カルヴェって、どこかで名前聞いたなー。どこだっけと思いきや、こちらの記事で、コレットがエマ・カルヴェ邸で見たマタ・ハリのダンスについて言及していたっけ。アニメ作品でなければ、ことによってはマタ・ハリも出てきたかもしれないのか。

 

 ロダンのアトリエでは、女流彫刻家カミーユ・クローデルに会うのだが、ディリリが「この作品が好き」と指さしたのは、彼女の作品だったというのが良い。

 女性知識人として化学者マリー・キュリーだけでなく、「ミシェル先生」と呼ばれるルイーズ・ミシェルも登場する。調べてみると、無政府主義者、教師で、ニューカレドニアに滞在したこともある。ディリリもそこで出会い、教育を受けたということだろう。


 ツェッペリンの飛行船まで出てきたのは驚いた。サラ・ベルナールの訪れた宝石店のそばで、英国皇太子だったアルバート殿下(バーティ)が現れるし、ディテールが細かいな~と感心。

 フランス語のWikipediaを見ると、作中いちいち名前を呼ばれなくて、気づかなかったけど、ちらっと有名人が登場していたらしい。リュミエール兄弟、どこにいたの。

Dilili à Paris — Wikipédia

 

cinemagical.themedia.jp

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