「シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢」Le Grand Bain
出演：マチュー・アマルリック、ギヨーム・カネ、ジャン＝ユーグ・アングラード
監督：ジル・ルルーシュ
＜あらすじ＞
フランス、ローヌ・アルプ地方の都市。市営プールで「男子シンクロチームメンバー募集」のポスターを見て、失業中のベルトランは参加する。メンバーはいずれも中年男性ばかりで、皆それぞれ家庭や仕事などで悩みを抱えていた。女性指導者のデルフィーヌは元デュエット世界王者だが、引退後はアルコール依存症に悩み、断酒会に通っていた。
ある時、インターネットで男子シンクロの国際大会を知り、エントリーする。無謀ともいえる彼らの挑戦の結果は果たして――？
スウェーデンに実在する男子シンクロチームが世界大会で優勝した実話に基づいている。日本では今年のフランス映画祭で、一足先に公開された。
日本だと数年前に映画「ウォーターボーイズ」がヒットし、男子シンクロチームの認知度はそれほど低くない。でもフランスではいまだに女性の競技と思われ、アマチュア男性がシンクロに挑戦すると「女々しい」と言われてしまう。
「ウォーターボーイズ」はまだ高校生なので、皆若くて体力もあるし、振り付けもすぐに覚える。だが、この映画は中年男性がほとんどで、ぽよぽよのお腹だし、体力もないし、仕事の合間に振り付けを覚えるのも大変。オリビア・ニュートン・ジョンの名曲「フィジカル」が流れる中、それぞれの職場で振り付けを練習するおじさんたちの姿に笑いが止まらない。愛おしさを覚えるほど。
前半では、メンバーのそれぞれの境遇が描かれる。ベルトラン（マチュー・アマルリック）は失業中、ロラン（ギヨーム・カネ）は厳格な性格で妻子に逃げられてしまい、プール販売会社の社長マルキュス（ブノワ・ポールヴールド）は会社が倒産目前、売れないミュージシャンのシモン（ジャン＝ユーグ・アングラード）は離婚して会えない娘の学校で給食おじさんをしている。女性と比べて男性はなかなか愚痴を吐き辛いのだろう。練習後のサウナやパブで、悩みを打ち明けたりするうちに、彼らは仲良くなっていく。
一転して後半では、練習はのんびりモードからスパルタモードに！ デルフィーヌが選手を引退したのは、コンビを組んでいたアマンダが事故に遭い、車椅子で生活するようになってからだが、このアマンダがとにかく厳しい鬼コーチ。デルフィーヌの指導だと、とてもじゃないけど「国際大会は無理だろう」という雰囲気だったのが、アマンダに交代した途端、走り込みなどハードな練習メニューになり「やっぱりこのぐらい鍛えないとダメだよね」と納得。
ノルウェーでの国際大会では、筋肉ムキムキの若手選手ばっかりで、彼らのダイナミックな演技にフランスのメンバーは圧倒されてしまう。他国選手の水着が、それぞれのお国柄を反映したデザインで、チラッと映った桜と富士山らしき模様は「日本代表」なのかな。かなり上位に入っていて、日本の男子シンクロ、なかなか強いという設定みたい（笑）
場面によってはスタントなども使ったのかもしれないが、おじさん俳優陣の奮闘は間違いない。ジル・ルルーシュ監督のインタビューによると「アヴァニシュ役の俳優はカナヅチだった」そうなので、足の着かない深いプールで泳げるようになるまで、かなり特訓したと思われる（なぜ引き受けたんだろう……）。
映画のBGMが1980年代の音楽ばかりで、私たちぐらいの中高年世代を想定しているのかな。オリビア・ニュートン・ジョンの「フィジカル」って、スポーツものの定番BGMなのかね。ジャン＝ユーグ・アングラード（映画で見るの、久しぶり）演じるシモンと、そのローディーを見てたら「ああ、こーいう1980年代のまんまの長髪ロックおじさん、いるいる」と笑いそうになった。ジャン＝ユーグ・アングラードって、俳優を目指す前はミュージシャン志望だったそうなので、ギターを弾く姿がものすごくはまってる（あ、ちゃんと”見せ場”もあります）。
これまたフランス映画祭の時の監督インタビューによると、「スポーツマンのギヨーム・カネと、マチュー・アマルリックは上手かったよ」とのことで、自転車の手放し運転の場面を見てると、マチュー・アマルリックって運動神経良さそう。
脚本のベースとなったスウェーデンの男子シンクロチームの話は、スウェーデンでも映画になり、さらに英国でも映画になっている（ふと気になったが、この2作では、競技中の音楽は何をかけたんだろう。やはり1980年代の音楽？）。日本では9月に、英国版の公開が控えているが、「シャーロック」のレストレード警部ことルパート・グレイブスが出演している。
・スウェーデン版：Allt flyter - Wikipedia
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