横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

ココ・アヴァン・シャネル

ココ・アヴァン・シャネル」Coco avant Chanel
アンヌ・フォンテーヌ監督
オドレイ・トトゥ主演
2009年 フランス映画

 

  8月19日はフランスのデザイナー、ココ・シャネルの誕生日ということで、2009年に見た伝記映画「ココ・アヴァン・シャネル」の感想を。

 2009年といえば、フランスでは女性有名人の伝記映画が相次いでいた頃。2008年には作家フランソワーズ・サガンの映画「サガン 悲しみよ こんにちは」(日本では2009年公開)、2007年に歌手エディット・ピアフの映画「エディット・ピアフ 愛の讃歌」などが公開された。

 サガンとピアフの伝記映画では、若い頃から晩年までを描いていたが、本作ではファッションショーの場面、つまりシャネルの成功を描くところで終わっている。

 

 映画は孤児院の暮らしから始まる。男に頼らず自活するため、歌手を目指すが、当時としてはエンターテイメント系の職業くらいしか、手段がなかったということか。知り合った女優に「女優をやってみたい」と言うも、「訓練を始めるには遅すぎる」と言われ、断念する。

 ココや、ココの姉は裕福な男性の愛人となったり、当時のフランスでは結婚するのであれ、愛人になるのであれ、男に頼らないと生活できなかったのか! という、頭では知っていた(はずの)事実に改めて衝撃を受ける。戦後、フランスでフェミニズム運動が盛んになるのも当然だと納得。

 自立心あふれるココが、英国人のアーサー・”ボーイ”・カペルと出会い、女性として束の間の幸せを得る。それだけに、カペルの事故死を知り、現場に向かう場面の表情に、何とも言えなくなる。その後も何人か恋人を作ったが、生涯本当に愛した男性は、彼一人だったのではあるまいか。

 

 漁師の着ていたボーダーシャツをヒントにしたマリンルック、黒のシンプルなドレス、そして何より身体を締め付けない、動きやすい女性服。現在では当たり前になったこれらのデザインが当時は斬新で、それをいち早く取り入れたシャネルの先見性が光る。


 帽子店を皮きりに、服飾店の方へ進出するが、時代の流れを考えると、それで良かったと思う。戦前のヨーロッパは帽子をかぶるのが当然だったが、戦後はだんだん帽子が必需品でなくなっていったのだから。

 ココ・シャネルことガブリエル・シャネルは、フランス中部のオーヴェルニュ生まれ。主演のオドレイ・トトゥ(彼女もシャネルと同じく、獅子座の女性!)もオーヴェルニュ地方の出身なので、この地域特有の顔立ちをしているということで、キャスティングが決まったらしい(2009年の公開時にそんな記事を読んだが、もう6年も前なので、ソースが見つけられない。仏語のサイトだったかも)。日本で言うと、沖縄顔みたいなものか。

【追記】このインタビューに言及あり

www.cinemacafe.net



 オドレイ・トトゥは、シャネルの香水「No.5」(フランス語発音でヌメロ・サンク)のCMに出演していて、監督はなんと「アメリ」のジャン=ピエール・ジュネ。短編映画みたいなCMだった。

www.youtube.com