横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

オートクチュール

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オートクチュール」Haute Couture
監督:シルヴィ・オハヨン
出演:ナタリー・バイ、リナ・クードリ

<あらすじ>
 ディオールオートクチュール部門のアトリエ責任者であるエステルは、次のコレクションを終えたら退職する。準備に追われていたある朝、地下鉄で若い娘にハンドバッグをひったくられてしまう。犯人は郊外の団地に住む移民二世のジャド。だが、滑らかに動く指にドレスを縫い上げる才能を直感したエステルは、ジャドを見習いとしてアトリエに迎え入れる。だが、最後のショーを目前に、突然エステルが倒れてしまった――。


 フランスのベテラン女優ナタリー・バイと、「フレンチ・ディスパッチ」(こちら)でキュートな会計係を演じたリナ・クードリが共演。
 ディオールオートクチュール部門が映画に全面協力している。確か、映画「パリの調香師 しあわせの香りを探して」(こちら)では、ディオールの香水部門が全面協力していたっけ。

 きめ細かな手仕事、美しい布地、仕上がっていくドレスにうっとり。「ソーイング・ビー」を見ていたので、尚更感じる。でも、ベテラン刺繍職人のところは、もっと布地と刺繍をしっかり見たかったなあ。

 女性ばかりの職場に、いきなり縁もゆかりもない移民の娘(しかも元スリ)がポンと入って来る。衝突も起こるが、アンドレみたいな性悪女、今時いるのかねえ? 昔の少女漫画の悪役みたい。私が上司だったらアンドレを首にするけどなあ。目つきからして、明らかに病んでるもん。だから同僚が彼女に冷ややか。
 もちろん、そんなヤバい人(スツールで殴るとか!)ばかりでなく、多くの職人は好意的にジャドを迎え入れる。若くて、どんどん技術を吸収していく姿が応援したくなるのだろう。

 でも、どなたかが書いていたように、このストーリーは「おとぎ話」なのかもしれない。


 エステルがカトリーヌ(子持ち)に「後任だからって、私みたく残業しないで」と言う。かたや、特訓のためジャドに土曜日も出社するように伝える。職人の技術は簡単には身につかないのだが、残業や土日をつぶすような働き方は、カトリーヌが主任になったら変わるのだろうか。

 刺繍は専門の職人に外注していて、日曜日にエステルが自ら生地を届けに行く。日本でも確か、倉敷のデニムは、内職の主婦に依頼していた。ブランドを支えているのはこのような職人(女性)なのだ。


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