横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

リーディングの仕事

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 最近はリーディングの仕事を頂くようになったので、出版翻訳の仕事を目指す方に向けて書いておきます。

 

 出版翻訳の仕事には、本の翻訳以外にも、リーディングという仕事があります。どういう仕事かと言うと、原書を読んで、主にあらすじ、感想、海外での評価、日本市場でも受け入れられそうかといったことをレジュメにまとめます。日本の出版社が翻訳を出版するかどうか、判断材料にするためのものです。

 レジュメにどういう項目を書くのかは、依頼元によります。自分で出版社に企画を持ち込んだ時は、私は上記に加えて試訳も添えました。


 同様の本が既に日本で出ているかも確認し、どんな本と似ているのか、あるいは似ていないのか、といったことも調べます。この類書を探すのが意外と手間です。

 私の場合はフランス語ですが、既に発売されたフランス語→日本語の翻訳本だけでなく、たとえば英語やドイツ語といった他言語からの翻訳本も確認します。もちろん、日本人の作家が同様の本を書いていないかも確認します。

 一度あるジャンルがヒットすると、同じようなジャンルの本を他の出版社が後追いすることがあります。2000年代だと「ハリー・ポッター」のヒットを機に、ファンタジー系の需要が高まった記憶があります。

 なので、類書があることが望ましい場合もあれば、ない方が望ましい場合もあるでしょう。日本の出版市場で現在どういうものが話題・人気なのか、普段からアンテナを立てて情報収集しておくことも必要です。


 自分では選ばない本が回ってくるので、「ああ、今フランスやヨーロッパでは、こういうテーマが旬なのか」「まだ日本で翻訳されていないけど、こんな作家がいるのか」と、色々勉強になります。

 児童書から大人向けの本まで、色々なジャンルとボリュームの本が回ってきますが、作業時間として、私は10日~2週間ぐらいを目安としています。今のところ、担当した本が日本で出版が決まったという知らせは聞いていませんが、そのうちチラホラ出てくるんじゃないかなと思っています。