JSHCの東山あかねさんから、パリで見つけたという仏語ホームズ本を頂きました。ありがとうございます!
フランスでは、「シャーロック・ホームズの母方の祖母がフランス人」ということで、「だったら母親もフランス人」、「ホームズもフランス語が話せる」、「親戚もフランスにいるでしょ」とばかりに、フランスを舞台にしたホームズ・パスティーシュがいくつも出版されている。
世界各地を訪れ、事件を解決するホームズの姿は「水戸黄門」を彷彿とさせるのだが、「ご当地キティ」「ご当地リラックマ」に倣って、ワタシは「ご当地ホームズ」と呼んでいる(この呼び名、定着しないかな……)。
ということで、フランス国内で出版された「ご当地ホームズ」をざっくりと紹介する。まずは、上記写真の本から。
Pierre Charmoz / Jean-Louis Lejoinc
『Sherlock Holmes à Chamonix』(2018年)
1911年、著名な英国人登山家エドワード・ウィンパーがシャモニー=モンブランで急死した。ウィンパーは殺害されたのか? ホームズは旧知のウィンパーのため、シャモニーに向かい、謎を解く。
このコンビでは『Ecrins fatals ! : La première enquête de Sherlock Holmes』(少年時代のホームズが登場する)を、Pierre Charmoz単独では『Sherlock Holmes et le monstre de l'Ubaye』という作品を発表している。
ホームズ・パスティーシュは、よく同時代の有名人が出てくる。本作では英国の登山家で、シャモニーとも関連のあるウィンパーを登場させた。
・アルザス地方
Jacques Fortier
『Sherlock Holmes et le mystère du Haut-Koenigsbourg』(2009年)
この作品はバンドデシネになっており、ストーリーは、過去にこちらの記事で紹介している(アーカイブ:シャーロック・ホームズのバンドデシネ 第2回 - 横文字の島)。
同じく、アルザス地方を舞台としている
・Christine Muller
『Les aventures alsaciennes de Sherlock Holmes』(2014年)
1898年の冬の終わり、シャーロック・ホームズとドクター・ワトソンがアルザスを訪れる。8つの短編で、ホームズは殺人事件の謎解きを行う。
この著者には、同じくアルザスを舞台にした『Sherlock Holmes et le Pont du Diable』という作品もある。
・リヨン
Eric Larrey
『L'affaire des Colonels: Les enquêtes lyonnaises de Sherlock Holmes et Edmond Luciole』(2019年)
1870年代初頭。最近リヨンに引っ越してきたエドモン・リュシオルには、シャーロック・ホームズという英国人のいとこがいた。数週間ほど、いとこはエドモンの家に滞在することになった。その頃、リヨンの街では連続殺人が起こっていた。シャーロックの提案で、少年たちは捜査に乗り出す。
レビューによると、「第二帝政期のリヨンの雰囲気がよく再現されている」という。エドモン・リュシオル(Edmond Luciole)って、エドモン・ロカール(Edmond Locard)にちなんでいるのかな。機会があれば作者に聞いてみたい。
・ポー
François Pardeilhan
『Pau, la Jeunesse de Sherlock Holmes』(2003年~)
シリーズ4冊の後、「Départ(旅立ち編)」と「Prélude(プレリュード編)」2巻が出ている。
シャーロック・ホームズが少年時代の3年間をフランス・ポーで過ごしたという設定。第1巻では、後にベイカー街の部屋で見られるペルシャ・スリッパや熊の毛皮の敷物のルーツ、バリツの練習のエピソードなどが出てくる。
Ugo Pandolfi / Jean Pandolfi-Crozier
『La vendetta de Sherlock Holmes』(2004年)
1893年、ホームズはニーム、ナルボンヌ、モンペリエを経てコルシカ島へ渡る。モリアーティ教授の一味を追いかけ、撲滅するためだ。物語の背景には、19世紀末のコルシカ島で見られた、「マキ」と呼ばれる潜伏活動や血の抗争がある。島でホームズを案内した地元の技師ウーゴ・パンドルフィは手記を残し、それを子孫(この本の作者)が発見したという体裁。
ご当地ホームズ本の特色は、その地方の小さな出版社から出ていることが多いということ。初めて聞いた出版社も多く、サイトを見ると、その地方や街の文化や歴史に特化した本を出していて、なかなか面白い。ホームズ本もその流れで出版されたものと考えると良い。もう一つは、地元の人が書いているので、観光地や歴史、グルメなど、ご当地ならではの情報や魅力が詰まっていて、観光ガイドも兼ねる傾向がある。
他にもフランス国内が部分的に舞台になっている作品はあるが、舞台が基本的に1つのエリアで、タイトルに「ご当地」色が出ているものを選んだ。が、なにせ400種類ものチーズを作っている国だ。この調子で行くと、今後いくつの「ご当地ホームズ」本が誕生するのだろう…… ((;゚Д゚)ガクブル