「神様メール」Le Tout Nouveau Testament
監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル
出演:ピリ・グロワーヌ、カトリーヌ・ドヌーヴ
2015年 制作:ベルギー、フランス、ルクセンブルク
「トト・ザ・ヒーロー」(1991年)のジャコ・ヴァン・ドルマル監督の作品。久しぶりに名前を聞いたと思いきや、寡作なのね。
神様はブリュッセルのアパート高層階に住んでいて、パソコンで人類の運命をコントロールしている。しかも酒癖の悪い、妻子への優しさのかけらもない嫌な奴ときた。
娘のエアは家出を決行するが、アドバイスをくれたのは、今は置物になっている(でもなぜか妹と話せる)兄のイエス=キリスト。洗濯機から地上へ脱出というのが面白い。兄もそこから出て行ったとすると……当時、洗濯機ってあったのか!?
家出前に、エアが人類に余命をメールしたため、地上ではパニックが起きていた。彼女には使徒をあと6人増やし、合計18人にするという願望があった。「新・新約聖書」を作るのだ。
ブノワ・ポールヴールドって、「チャップリンからの贈りもの」(記事)といい、ダメ親父を演じさせたらピカイチだな。そして、ヨランド・モローは”おふくろ”って感じ。地上での出来事が、「アメリ」を思わせる、どこかファンタジーな描き方。なにせ、殺し屋の周りに花が咲くのだ。
「エール!」(記事)でまったく話さなかったフランソワ・ダミアンが殺し屋役で出ていて、こんな声だったのねと確認。ムクムクしたクマのような雰囲気があって、典型的な殺し屋っぽくないのがミソ。
カトリーヌ・ドヌ―ヴ演じる優雅なマダムは、ゴリラと恋に落ちる。日本では最近、イケメンのゴリラ、シャバーニ君が人気で、写真集まで発売されたっけ。映画のゴリラはさすがに着ぐるみかな? どうせなら、シャバーニ似で着ぐるみを作れば良かったのに。
エアは人間の心の音楽を聴くことができて、6人の使徒の男女の胸にそっと耳を寄せて「あなたの音楽はこれ」と告げる。ウィリー少年の音楽がシャルル・トレネの「ラ・メール」と言った時は、「シャルル・トレネ、キター!」と思ってしまった。何せ、「トト・ザ・ヒーロー」でもシャルル・トレネの「ブン」を使っていたもんね。
孤独だった使徒たちが、それぞれ愛する人に出会ったり、会社を辞めて旅に出たり、自分らしい生き方を歩み始める。でも、やっと幸せになった彼らには、もうすぐ寿命が……と思いきや。女神である、エアのお母さんが大活躍。
エンディングは、エアのお母さんの趣味である刺繍にちなんで、刺繍をあしらった可愛い画面で締めくくる。スケートとか、「新・新約聖書」にちなんだモチーフが出てくる。「トト・ザ・ヒーロー」を見た後は、切なさが残ったけど、この映画を見た後は笑顔になれる。