「エール!」La Famille Bélier
監督:エリック・ラルティゴ
出演:ルアンヌ・エメラ、カリン・ヴィアール、エリック・エルモスニーノ
2014年 フランス映画
原題は「ベリエ一家」なので、最初から家族の関係を中心に描いた映画だとうかがえる。主人公の高校生ポーラ・ベリエは、父、母、弟が聴覚障害者で、家族と外の世界をつなぐ”通訳”を担っている。畜産農家である家業の手伝いもし、授業ではつい居眠りも。
ある日、気になる男の子と同じ授業をとりたいという軽い気持ちでコーラスの授業をとる。音楽教師トマソンに才能を見出され、パリで歌のオーディションを受けてみないかと言われる。
そこへ、村長選に出馬するといきなり父親が言い出し、手話通訳として選挙運動にポーラも巻き込まれる。
高校生の日常としては、忙しすぎでしょ!!
音楽の授業がきっかけで、気になる男の子ガブリエルとデュエットを歌うよう、教師に勧められる。このガブリエルはパリ出身で、家庭の事情で田舎の祖母に預けられていた。たぶん、「パリに戻りてー!」と思っているはず。当初オーディションに出ようとしたのは、音楽学校を機に、パリに戻るつもりがあったのだろう。
音楽教師のトマソンも、かつては華やかなショービズの世界(つまり、パリ)で活躍していたのが、今は田舎の高校の音楽教師としてくすぶっている。この2人は似たような境遇かも。
ポーラはオーディションのことを家族に話し、反対されたときに、「私に一生チーズを売っていろって言うのね」ともらす。音楽の世界への憧れもあるだろうが、パリから来たガブリエルらに出会って、地元以外の世界を知ってしまったのも関係あるかもしれない。
音楽がきっかけで、ポーラは家族と離れること、自立することを余儀なくされるけれど、両親にとっては、子離れの物語でもある。この両親は、ポーラが音楽と出会わなくても、いつか結婚して家を出て行くかも……とか考えたことはなかったんだろうか?ポーラへの依存の度合いが、負担のかかり方が半端じゃない。
気になる村長選挙の結果については、エンドロールに、トリコロール(三色旗)のたすき(これ、正式名称は何だろう)をかけた父親の映像が出てきて、どうやら当選したらしいことがわかる。選挙運動でのあのひどい通訳ぶりで、よく当選できたなー。だって、有権者を怒らせていたじゃん。一体何があったのか?
オーディションの場面の歌(ミシェル・サルドゥの「青春の翼」)が、両親から自立しようとしているポーラの心情にぴったりだった。これは親離れ、子離れの映画なのだ。たぶん、子育て中の人や、子供が巣立っちゃった人には号泣ものだろう。映画館では、私の隣のおばさまが涙ぐんでいた。
主役のルアンヌ・エメラはこれがデビュー作で、日本でも最近CDが発売された新星。音楽教師役のエリック・エルモスニーノは、セルジュ・ゲーンズブールの伝記映画でゲーンズブール役を演じていた人。田舎でくさっているところとか、ハマり役だった。母親役のカリン・ヴィアールは、色々な映画で見たことがある。テンション高めの中年女性を演じると、ぴったり。たぶん、ほかの俳優たち共々、手話を猛特訓したのだろうな。
- アーティスト: サントラ,ルアンヌ,パリオペラ座付属少年合唱団,ザ・ティン・ティンズ,エリック・エルモスニーノ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2015/10/23
- メディア: CD
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