横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

マダム・イン・ニューヨーク

マダム・イン・ニューヨーク」English Vinglish
監督:ガウリ・シンデー
主演:シュリデヴィ
2012年 インド映画

 <あらすじ>
インドの中流家庭の主婦シャシは、料理上手な良妻賢母。英語が話せないため、ビジネスマンの夫や、高校生の娘にバカにされる。ある日、NYに住む姉から、娘ミーラ(シャシの姪)の結婚が決まったと知らされ、結婚式の準備を手伝うため、単身NYに行くことになる。現地で一念発起し、シャシは英語学校に通い始める。


 日本人には色々な意味で身につまされる映画。インド人って、皆英語がペラペラなのかと思っていたけど、世代によってはそうではないんだね。調べてみると、あくまで準公用語であって、誰でも話せるというものではなく、ホワイトカラー層に限られるらしい。

 



 学校関係者が英語を使っていたり、娘の友達の母親が英語を使っていたりするのは、インド国内で地域によって言葉が違うからかな? 

 日本人が学校で英語を習っても話せないのは、日本国内では日本語で生活できるからなんだよ。日常生活で英語を使う機会がまったくないからなんだよ。教育のせいだけじゃないんだよ。

 家庭でのシャシの居心地の悪さって、英語ができないことじゃなく、主婦の地位が低いからなんでは? 特に旦那だよ! 美人で料理上手な奥さんがいて、何が不満なの? あの女性の同僚は何なの?(`ε´) 旦那がバカにするから、娘(母の美貌を受け継がない)まで母親をバカにするんじゃん。シャシがキレずにいられるのは、幼い息子(かわいい)が「ママ~」と慕ってくれるから、そして同居の姑が優しいから。

 はっ。
 フェミニズム絡みのテーマは、つい熱くなるのう。
 はあはあ。

 NYに着いてからも、カフェで怖い思いをするわ、コーヒーすらうまく買えないわ、さんざんな目に遭う主人公。よりによってNYでも最悪な店員にあたったとしか思えない。日本だったら、もう少し外国人に親切な気がする。英語ダメな田舎の店主が「外国人お断り」なんて対応もするけど、少なくとも客を泣かせたりはしない。いや、どっちも客あしらいダメダメなんだけどな。

 「4週間で英語が話せる」という広告を見て、シャシは英語学校に思い切って電話する。んで、受付嬢が早口で……。おいこら、英語が話せないから申し込んでいるんだよ。もっとゆっくり話さんかい。対面ならジェスチャーも使えるけど、電話は聞き取り力がないと難しいんだよ。私個人は英語の国と非英語圏の両方に行ったことあるけど、英語ネイティブが一番、外国人に容赦ないよね(怒)

 はっ。
 また映画の感想から脱線しちゃったよ。
 ぜーぜー。

 思い切って申し込んだ英語教室では、カフェで会ったフランス人男性ローランと再会する。クラスメイトは全員、英語初心者の外国人で、シャシは気負わずに過ごし、本来の自分らしさを発揮する。聡明さや、周囲に見せる大人の女性らしい振る舞いを見て、ローランはどんどん彼女に惹かれていく。(彼女が既婚者だと知ってか知らずかアプローチするところは、フランス人!!)

 大学生の姪のラーダ(結婚するミーラの妹)はNY育ちの現代女性で、家族に内緒で英語学校に通うシャシを何かと助けてくれる。後からインドの家族が到着した際は、授業のために抜け出すのに協力してくれたり、最終試験と結婚式が同日になった時も、「美容院へ行って」と助け船を出したり。頑張るシャシを応援する気持ちもあったと思うが、同時に、シャシの夫(妻を見下す男)の態度に、イラっとしたのかもしれない。私がラーダの立場なら、やっぱり全面的にシャシを応援するもん。そして、生意気な娘にピシャっと言うよ(笑)

 結婚式のお菓子を、イタズラ息子のせいで作り直しになった場面では、もう泣きそう。「お店のお菓子でいいよ」と言われたけど、シャシは学校に行くのを諦め、台所に立つことを選ぶ。

 ラーダのはからいで、最終試験を終えたクラスの皆を結婚式に招待する。ラーダ、グッジョブ! シャシは花嫁の叔母としてスピーチをするが、ゆっくりながらもほぼ完ぺきな英語。これが最終試験の代わりに。

 「あっ」と気まずそうな旦那と娘。
 さらに、ローランと話すシャシを見て、気が気じゃない旦那(ほらほら、しっかりつかまえないと、奥さん、他の男に持ってかれるわよ~)。

 旦那もただ嫌な奴ってだけじゃなく、結婚式のために、インドから素敵なドレスを持ってきていたんだよね。そういう場面がなかったら、いきなり家庭を捨てたりはしないまでも、恋の行方はどうなっていたのか。

 シャシにとって自分らしさを取り戻すきっかけが、英語の学習、そしてローランの存在だった。

 以下、余談。
 インドのみならず、アジアの女性の立場や気持ちをよく理解しているな~と思ったら、女性の監督だった。やっぱり。

 物静かそうなヒロインも、真面目そうなビジネスマンの旦那も、いざ結婚式となると、踊る!! インド映画は「ムトゥ 踊るマハラジャ」しか見たことけど、インドの人って、踊るのがデフォルトなんだね!!

 ヒロインを演じたシュリデヴィという女優さん、初めて見ました。とてもきれい~!アラフォーくらいかなと思いきや、実際はアラフィフだったとな! インドには、どんな美の魔法があるんでしょう!? 日本の吉永小百合さんに匹敵する人気女優ですと。

 

インドが好きな方に。インド発の多国籍ミステリ:

iledelalphabet.hatenablog.com

 【2019年追記】

 先日、四谷の「たいやき わかば」に行ったら長蛇の列!1時間待ちと聞いて、別の場所でお茶をすることに。インド料理店「ムンバイ」でティータイム営業をやっているのを見つけ、入ってみた。インド料理店でティータイムって、珍しい。

 お茶菓子の中にラドゥがあったので注文した。そう、「マダム・イン・ニューヨーク」でヒロインが作っていたもの。写真を撮り忘れたので、ネットで見つけた画像を添える。

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マサラチャイとぴったり! 1個でも十分満足した。他のお菓子もおいしそうだったけど、いくつも頼んだら糖分とりすぎだよね……。