横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

料理長が多すぎる

「料理長が多すぎる」レックス・スタウト
ハヤカワ・ミステリ文庫(平井イサク訳)


 古典ミステリをお勉強。読書というより、調べる必要に迫られて読んだ。うーん。夜中に読んじゃいけないね! この本は、ドラマ「孤高のグルメ」や「深夜食堂」に匹敵する「めしテロ」だよ!(オレ、夜中に読んじゃったよ……)

 美食と蘭の花をこよなく愛する名探偵ネロ・ウルフが、珍しく自宅どころかNYを離れて、カノーワ・スパーまで長旅をする。世界で活躍する名シェフが集まる晩餐会が開催されるのだが、ネロ・ウルフには目的があった。ヘローメ・ベリンの絶品ソーセージ「ソーシス・ミニュイ」のレシピだった。

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 20世紀前半の作品なので、当時は料理といえば「フランス料理が一番偉い!」みたいな時代だったんだな。イタリア人はしっかりと、フランス料理のルーツはイタリアだと主張しているし。意外にも、アメリカ在住のネロ・ウルフが「米国にも美味いものはある」と、色々な料理名を列挙している。美味い料理には国境はないんだよということか。

 21世紀に入った現在は、日本料理が欧米でも人気だけれど、軽くてヘルシーな日本料理は、ネロ・ウルフは「美味しい」と言ってくれないだろうな。

 この小説の仏語版の題名はなぜか「La Sauce Zingara」という。ジンガラ・ソースとも、仏語読みではザンガラ・ソースともいう。小説の中には出て来なかったと思うんだけど……なんで!?