『ディス・イズ・ザ・デイ』
津村喜久子 朝日新聞出版
サッカーチームを応援する人たちを描いたアンソロジー。二部リーグとあるからJ2がモデルだろうか。見開きの全国各地の22チームが、微妙に実在のチームを外しているが、読むと「これ、ウチのチーム? あのチーム?」と思う絶妙さ。
ネーミングが面白くて、青森の「ネプタドーレ」なんて本当にありそう。エンブレムがリンゴのデザインだったり。
基本、あまり強くないチームのサポーター目線で書いているので、よその人(海外サッカーファンとか)に言いにくい心情は、なんだか分かる。二部リーグで上位のチームでも、「かつては一部だったのに」「かつては日本代表選手もいたのに」と、一部に戻れないことをこじらせていたり。経営陣への不満とか、補強の仕方とか、本書に出てくる人たちといくらでも語れそう。
家族の間で好きなチームが違う「若松家ダービー」。実際に、そもそも結婚前のカップルで応援チームが違うのにそのまま結婚してしまったというケースも知ってるので、形は違うけれど「あるある」。子供の成長に伴い、親子で好きなチームが違うって、あるのかな。あるのかもしれない。
非公式のかぶりものがサポの間で人気者になる「権現様の弟、旅に出る」は、某みかん県のチームのカエルさんを思い出してしまった。ロシアまでW杯観戦の旅に出たというカエルさん。
サッカー観戦は年齢を問わないということで、おばあちゃんサポーターも登場する。「おばあちゃんの好きな選手」では、しばらく会っていなかった孫がサッカーを機に、遠くに住むおばあちゃんと交流を深める。おばあちゃんが結構クール。サッカーパブも行っちゃう。
「眼鏡の町の漂着」では、チームのマスコットが可愛くて夢中になってしまった女性サポーターが、スタジアムに通うようになる。今まさに、ワタシ自身も浦和じゃない某チームのマスコットに癒されているので、ものすごく気持ちは分かる。よそのホームゲームに行って初めて、「マスコットはホームゲームに必ず来て、お客さんに会いに来てくれる」というのを知った時、浦和との違いに驚いた記憶があるから。いいよね、マスコットが働き者のところは……。
他にも、現役時代応援していた選手が引退して監督になっていたり、あるいはチームが消滅して移籍を余儀なくされたり(どうしても横浜フリューゲルスを思い出してしまう)、ゴール裏の住人がどうやって曲を作るのかとか、サポーターあるあるが満載。ご当地スタグルまで出てきて、どれもおいしそう。それにしても、ベルギー代表のアフロは、2人いるうちのどっちのことだろう。
チームを問わず、サッカーを応援する人にお勧めの一冊。