横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

ブレードランナー2049

ブレードランナー 2049Blade Runner 2049
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
製作総指揮:リドリー・スコット
出演:ライアン・ゴズリングハリソン・フォード

f:id:Iledelalphabet:20200511104127j:plain

 「ブレードランナー」と「ブレードランナー ディレクターズカット/最終版」の2本は見たけど、「ファイナル・カット」および合間の短編3作は未見。

 ハリソン・フォードといえば、最近は「スターウォーズ」にも出て、さらに「インディ・ジョーンズ」最新作にも出てと、30年ごしの続編が相次いでいる。もう、ハリソン・フォード祭り!

 前作「ブレードランナー」で描かれた世界は2019年。公開当時はディストピア映画として扱われた。続編の舞台である2049年は、さらにディストピアな世界。

 

 2017年現在、ここまで精巧な人間型ロボットはまだ誕生していないものの、異常気象やドローン、さらにAI(人工知能)開発がここ数年で予想を超えるほど進んでいるのを見ると、SF映画は現実世界の先取りだろうか、と考えてしまう。

 「ブレードランナー」と「ブレードランナー ディレクターズカット/最終版」のうち、本作の前編として納得いくのは後者かな。禁断の恋と逃避行という感じが出ていた。

 

 本作では、AIホログラムのジョイと新型レプリカントの捜査官Kも、最後はいわば逃避行に出るが、前作のデッカードとレイチェルの時のような、禁断の恋という感じはしない。

 前作で”ありえない”と言われたのは、レプリカントが自我を持ち始めたこと、そして人間と恋に落ちたことだが、今回の”ありえないこと”は、観客の予想を遥かに超えていた。

 主人公Kは最初から「人間もどき」と呼ばれる新型レプリカント。時折、人間を思わせる部分があり、上司の"マダム"にもそう指摘される。そこから自分が何者なのか、考えをめぐらせてしまうのだ。レプリカント=人造人間のはずなのに。

 

 感情の芽生えたロボットと聞くと、鉄腕アトムや映画「エクス・マキナ」を思い出すが、「ブレードランナー」の世界でレプリカントの”異常”が恐れられる理由は、人間にコントロールできなくなったり、暴走や反乱を統治側が恐れているから。

 最近、AIというかチャットボット同士の会話で、人間に理解不能な独自の言語を開発して勝手に話し始め、あわてて停止されたというニュースがあった。どうやら誤報だったらしいのだが、このニュースが流れた時、「怖い」という反応も少なくなかった。ロボットやAIを開発する側に、潜在的な恐怖があるのが分かる。

 

 レイチェルを久しぶりに見たけど、ほんとキレイ。デッカードがすべてを投げ出したくなったのが分かる。聖書のラケルは、英語だとレイチェル。「スター・ウォーズ」もそうだが、SF映画の裏には、壮大な世界観がある。

 

 あとは俳優の感想を。
 ロビン・ライト演じる、LADPのような組織のボスが女性って、カッコいい。「007」のジュディ・デンチや、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のグレン・クローズを思い出す。

 ハリソン・フォードはなかなか登場しない。捜査の過程で、30年前のデッカードとレイチェルの音声が再現されるが、声が若い。後で映像も確認すると、姿も若いうえにカッコいい。1980年代に「スター・ウォーズ」や「インディ・ジョーンズ」を見ていたファンには、当時の声は奇跡のよう。

 ライアン・ゴズリングって、他に見た作品は「ラースとその彼女」だけなんだけど(←オイコラ)本作を見ると、すごくイイね! 冒頭はほぼ台詞がないのだが、台詞以外の表情とか演技が雄弁なのだ。心に揺らぎのあるレプリカントという設定に合っている。

 ラブを演じたシルヴィア・フークスは、「鑑定士と顔のない依頼人」にジェフリー・ラッシュ演じる主人公を翻弄した女性役で出ていた。全然雰囲気が違うので、最初分からなかった。男優以上のアクションだった。

 

 ところで、「ブレードランナー」のエンディング曲、なんで使わなかったんだろう。エンドロールまで待ったけど、全然違うし。そのままが無理でも、アレンジして使えば良かったのに。

 海外で公開当初、興行成績がふるわず「この映画がアピール可能なのは40歳以上の男性のみ」と言われていたんだが  ↓

forbesjapan.com そうかそうか、ワタシは自分をオバチャンだと思っていたんだが、中身はオッサンだったということか。 Σ(・∀・;) えっ!?