横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

愛しき人生のつくりかた

「愛しき人生のつくりかた」Les Souvenirs
監督:ジャン=ポール・ルーヴ
出演:アニー・コルディ、ミシェル・ブラン
2015年 フランス映画  

愛しき人生のつくりかた [DVD]

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 夫を亡くしたおばあちゃんが、老人ホームから脱走した。息子と孫は行方を探すが――。

 主人公の祖母は80代、そしてその息子は60代で定年を迎えたばかりという設定。フランスも長寿大国なのだなと、しみじみ思った。もう何年か早くこの映画を作ったら、息子はもう少し若く、現役で働いていて、家庭のことに無頓着、という設定になったかもしれない。

 祖母は孫のロマンと仲良しで、何かのときに息子(ミシェル・ブラン)をすっ飛ばして孫に連絡がいくものだから、息子はしょげてしまう。妻ともしっくりこないし、家庭に居場所がないぞ。

 



 行方不明の祖母から絵葉書が来て、祖母の出身はノルマンディーのエトルタだと思い出す。ルパンの「奇巌城」の舞台ではないか! もちろん、白亜の断崖のほか、「アヴァルの門」や「針岩」(小説では中にルパンのアジトがある)も、バッチリ映っていた。観光案内所の女性が言っていたけど、本当にあの断崖は、自殺の名所なのかな。

 ロマンのルームメイトのカリムも、ロマンと同じく絶賛恋人募集中で、観光客のアジア人女性に声をかけたり。守備範囲が広いぞ。おばあちゃん関係で「運命の人」に出会ったロマンの話を聞いて、自分も祖母に会いに行ったり。面白すぎるぞ。

 バイト先の上司フィリップが、旅行代理店でオーストラリアへの旅の手配をする場面がちらっと出たけど、その後どうしたのか。ロマンに一言「現地の息子に会いに行く」とか告げても良かった気がする。ところでロマンは、いつ大学に行っていたんだろう。バイトは夜に入れて、昼間は家族に振り回されていたし。

 ミシェル・ブランといえば「仕立て屋の恋」以来かな。懐かしいな。パトリス・ルコントが監督で、共演はサンドリーヌ・ボネール。後で原作がシムノンの小説だったと知って驚いた。

 字幕の「退職」は、フランス語では「retraite」だが、日本の世情に合わせて「定年」とした方が分かりやすかったんじゃないかな。ロマンの母のことを「ママはまだ定年じゃないよ」と言ったり。