横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

Nothing has been proved(Dusty Springfield & Pet Shop Boys)

「とどかぬ想い」に続き、ダスティ・スプリングフィールドペット・ショップ・ボーイズが共演。最初に写真を見かけて「クラシックな衣装だなあ」と思い、曲を聴いてみた。

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 実はこの曲、1962年に起きた国家機密漏洩疑惑「プロヒューモ事件」を映画化した「スキャンダル」(1989年)の主題歌。PVには映画の場面が挿入され、臨場感がある。ダスティは渦中のコールガール、クリスティーン・キーラーの視点で歌い、ニールはクリスティーン・キーラーに取材する記者、クリスはカメラマンの役を演じている。それで衣装が1960年代風なのか。

 Wikipedeiaによると、「事件が起きた1962年当時に、すでにプロ歌手だった人に歌ってもらったら面白いだろう」と、ダスティ・スプリングフィールドに声がかかったらしい。

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 偶然だが、この歌詞は、デビューよりずっと前にニールが書いていたという。『One Hundred Lyrics and a Poem』によると、作詞は1979年。スティーヴン・ウォード裁判に関する本を読んだのがきっかけ。その後、主題歌の作曲依頼が来たときに「引っ張り出した」と、「Nothing has been proved」の解説に書かれていた。

 ん? ちょっと待って。
 依頼が来るより何年も前に作詞しといたら、その後使うことになったって?
 未来予知かな。

 同書によると、歌詞にも登場する事件の関係者ラッキー・ゴードン(元ジャズ・シンガー)が偶然レコーディング・スタジオにいて、曲の中で「It's scandal」の部分を喋ってもらおうとしたら、提示されたギャラが高すぎて断念したとか。


「プロヒューモ事件」の詳細はこちら。

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 映画「スキャンダル」は、キャストがなかなか豪華で、スティーヴン・ウォード役はジョン・ハートペット・ショップ・ボーイズの「ハート」のPVに出演していたイアン・マッケランが政治家ジョン・プロヒューモ役を演じている。日本公開は1989年だけど、見ていないなあ。VHSしか出ていないので、もういっそ動画で配信してくれないかな。

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 映画の予告編があったので、貼っておく。

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 登場人物の中に貴族のアスター卿の名前があり、胸が痛む。以前、アスター家を描いた素晴らしい本を読んだからだ。あのパワフルな「奥様」の息子ビリーが、たまたまパーティー会場として場所(クリヴデン)を貸したばかりに、こんな事件に巻き込まれるなんて。

 

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