横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

DUNE/デューン 砂の惑星

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「DUNE/デューン 砂の惑星」Dune: Part One
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ティモシー・シャラメレベッカ・ファーガソンオスカー・アイザック

 

<あらすじ>

 水の惑星カラダンを治めるアトレイデス公爵は、宇宙皇帝の命により、香料の産地である砂漠の惑星アラキスへ移封することになる。公爵はそれが罠であることを知っていたが、レディ・ジェシカ、息子ポール、臣下達を連れて行く。アラキスは長らくハルコンネン家に支配され、香料で莫大な利益を得ていた。香料が産出される砂漠には巨大な砂虫(サンドワーム)が生息し、砂漠の民であるフレメンが暮らしていた。
 アラキスへの出発を前に、ポールは砂漠の少女の予知夢を見る。レディ・ジェシカの出身である秘密結社<ベネ・ゲセリット>の教母がポールに会いに来る――。

 

 映画公開を前に、原作を新訳で読んでみた。

 初めて読んだはずなのに、なんだろう、このなつかしさは。
 そこはかとなく「スター・ウォーズ」と通じるものを感じたし。
 砂虫(サンド・ワーム)は「ナウシカ王蟲(オーム)みたい」と思ったし。

 映像を見て、文字だけではピンと来なかった部分が分かりやすくなり、ますます実感。
 たとえば、<操り声>は「スター・ウォーズ」のフォースで人を操る場面だし。砂嵐の真ん中で、ポールが操縦を止め、何かの声に任せるくだりは、「スター・ウォーズ」でルークがフォースに導かれて敵地に進入する場面だし。予知夢も然り。というか、予知夢の場面が小説よりかなり増えていた。

 SFはあまりなじみがないのに、『デューン』に影響を受けた映画を先に見ていて、その元ネタだったのかと合点が行った。SF界の古典なのね。

 脚本はストーリーの細かい枝葉を刈り取り、原作よりスッキリしていた。

 主人公たちが砂嵐に突っ込むくだり、SF映画のテンプレはもしかしてこの作品が元祖なのだろうか? 敵が「あの砂嵐では助からないでしょう」とボスに報告し、実は主人公は助かっていて……という展開。

 主人公の父親アトレイデス公爵が「スター・ウォーズ」でポー・ダメロンを演じたオスカー・アイザック。他にも有名な俳優が多数キャスティングされている。リエト・カインズ博士が男性から女性に変わっている。原作だと、博士がレディ・ジェシカを見て美しさにはっとなる場面があるんだけど、女性に変えると設定が変わってしまうような。女性の役が少ないので書き換えたのかな。 


 久しぶりにハリウッドらしい映画を見た。キャストは美男美女揃いで、壮大なストーリー、水の惑星から砂漠の惑星への変化、巨大メカとドンパチばかりで飽きないようにか、アナログなバトルシーンも挿入されている。

screenonline.jp

 以下、読書メモから。

 舞台が砂漠であること、水が貴重であることなど、アラビアがモデルとなっているらしい。都市の名前が「カルタグ」なのはチュニス郊外のカルタゴから来ているし、「スーク」は市場のことだ。アラビアといってもどの辺りがモデルになったのだろう? 
 遠い昔にフランスからチュニジアを訪れたことがあるので、これらの文字に飛びついてしまった。時間がなくて行かなかったが、チュニジア南部はサハラ砂漠に面しているのだ。そういや「スター・ウォーズ」のロケ地にはチュニジアも入っていたっけ。

 新訳は『デューン 砂の惑星』のみで、続編は旧版の方で『砂漠の救世主』、『砂丘の子供たち』、『砂漠の神皇帝』、『砂漠の異端者』、『砂丘の大聖堂』が刊行されている。こちらもいずれ新訳が出るのかな。


 そういえば、映画の1984年版が公開された時のことを覚えている。ミュージシャンのスティングが出演するというのを音楽雑誌で読んで、驚いたのだ。デヴィッド・リンチが監督で、「マニアック」だとか「B級映画」だとかさんざん言われて。評判がイマイチなのは、無理やり2時間に詰め込んだのもある。

 原作を読んだのを機に1984年版のキャストを確認したら、スティングが演じたのは、ハルコンネン男爵の甥フェイド=ラウサという、出番は少ないがなかなか大事な役ではないか。当時30代なので、少年役を演じるには年齢が……。どうして彼がキャスティングされたんだろう。

ja.wikipedia.org

 スティングのWikipedia(英語)に「Filmography」の項目があり、意外と映像作品に出演していた。

en.wikipedia.org

 スティングが故郷ニューカッスルを舞台にしたミュージカル「The Last Ship」を作曲して、客の入りがイマイチだった際に、本人が出演したっけ。それなりに演技の経験もあったのなら、それも納得。

 映画の1984年版は現在、AmazonPrimeで視聴できる。