前々回の「戦後日本のジャズ文化」という記事(こちら)で、フランスのヌーヴェル・バーグ映画に当時最先端のジャズが使われていたと書きましたが、それ以降のフランス映画で、ジャズが印象的だったものを紹介します。
「五月のミル」Milou en mai
監督:ルイ・マル
主演:ミシェル・ピコリ
1990年 フランス/イタリア映画
※DVDも出ているが、主人公が映っているのでビデオ版を貼っておく
1968年のフランス五月革命の頃の、田舎の一家の出来事。主人公ミルの母親が亡くなり、家族を呼び寄せる。あちこちでストライキが起こり、電話はつながりにくくなったり、葬儀屋までストを行ったりするなど、混乱が生じる。「死刑台のエレベーター」のルイ・マル監督によるヒューマン・コメディ。
5月の風のような、軽快なジャズ・ヴァイオリンを演奏するのはステファン・グラッペリ。サントラCDは、全編グラッペリの音楽という贅沢。
「ムード・インディゴ うたかたの日々」L'Écume des jours
監督:ミシェル・ゴンドリー
出演:ロマン・デュリス、オドレイ・トトゥ
2013年 フランス映画
お金持ちの青年コランは美しいクロエと出会うが、彼女は肺の中に蓮の花が咲くという謎の奇病にかかる。薬代のため、コランは働き始める。友人シックは、哲学者ジャン=ソオル・パルトル(ジャン=ポール・サルトルのパロディ)に傾倒している。
ボリス・ヴィアンの小説『うたかたの日々』(『日々の泡』)は、1960年代に一度映画化されている(コラン役はジャック・ペラン)。本作はレトロな雰囲気と、ミシェル・ゴンドリー流のカラフルでポップな画面が印象的。最初はまばゆいカラーで始まり、終盤に向けてモノクロに変わって行く。
ピアノを弾くだけで、カクテルが自動で作られる<カクテルピアノ>が登場する。映画ではシックの演奏が白熱するあまり、カクテルの卵に熱が加わる(うえー)。
Amazonフランス版に、サントラCDの曲名が詳しく出ている。
https://www.amazon.fr/LEcume-Jours-Artistes-Divers/dp/B00BWUXIZ6
「A列車で行こう」「キャラバン」「クロエ」など、懐かしい名曲揃い。特に、「クロエ」が演奏されるダンスパーティは、主人公コランとヒロインのクロエが出会う重要な場面。ダンス(ビグルモワ)で足がびよーんと伸びたり、絵はシュール。
「僕のスウィング」Swing
監督:トニー・ガトリフ
主演:チャボロ・シュミット
2002年 フランス映画
夏休み、ストラスブールの祖母の家に預けられたマックス少年は、マヌーシュ・スウィングという音楽に心奪われる。ギターの名手ミラルド(チャボロ・シュミット)の元に通い、ギターを習う。そこでロマの少女スウィングに出会い……。
伝説のギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトへオマージュを捧げた音楽映画。ミラルドを演じたチャボロ・シュミットは、マヌーシュ・スウィングの第一人者。
フランスのジャズは、独自の変遷をたどってきた。戦前に米国から”輸入”されたスウィング・ジャズに、ロマ(ジプシー)のルーツを持つジャンゴ・ラインハルトがジプシーの音楽をミックスさせて、マヌーシュ・スウィングの音楽形式を完成させた。
マヌーシュとは、フランス北部やベルギーに暮らすロマのこと。
サントラCD、原作の小説はこちら
フランスとジャズつながりで: