横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

夢の本屋をめぐる冒険 フランス編

f:id:Iledelalphabet:20200917180250j:plain

 録画しておいたものを視聴。フランスのどこの本屋を紹介するのだろうと思っていたら、パリにある「シェイクスピア・アンド・カンパニー」書店。名前の通り、英語の本の書店である。

www.nhk.jp

 なんと、Wikipediaに項目があった。

ja.wikipedia.org

 パリのガイドブックでこの書店の名前を見たことはあったけど、ずっと謎だったのだ。「どうしてフランスに、英語の本の書店が?」と。海峡を渡ればすぐにイギリスなのに、と。

 番組を見ると、初代店主は米国人のシルヴィア・ビーチという女性。最初の店舗をオープンしたのは、1919年のこと。いわば「パリのアメリカ人」だ。

 店を訪れた作家は、「ロスト・ジェネレーション」のヘミングウェイフィッツジェラルドなど、錚々たる顔ぶればかり。単なる書店としてだけでなく、文化人の集まる場所となっていた。また、ジョイスの『ユリシーズ』は英米で発禁処分となり、シルヴィア・ビーチが「この書店から出版しましょう」と、出版を引き受けたという。

 ふと「この素敵な書店、第二次大戦中はどうなったんだろう」という考えが頭をよぎった。やがてフランスはナチス・ドイツに占領されるからだ。1941年に、シルヴィア・ビーチはオデオン通りにあった店を閉鎖した。

 

 では、誰が店を引き継いだのだろうか?

 戦後の1951年、やはり米国人のジョージ・ウィットマンが別の英語書籍の書店「ル・ミストラル」を始めた。パリ左岸にあり、こちらも文化人が集まる場所となった。店主ウィットマンは、シルヴィア・ビーチと知り合いだった。

 1962年に彼女が亡くなると、「シェイクスピア・アンド・カンパニー」の店名を引き継いだ。現在も続く書店は、こちらの店舗だったのだ。うってつけの人物がうまい具合に引き継いだものだ。天井の立派な梁が気になり、中世の建物かと思っていたが、Wikipediaによると、元々は16世紀の修道院だったという。

 この書店にはユニークな仕組みがある。若い作家の卵を店舗の上の住居部分に寝泊まりさせる代わりに、無償で店員として働いてもらうのだ。彼らのことは<タンブル・ウィード>という愛称で呼ばれる。これまで、多くの若者がここに滞在したという。

 現在はジョージ・ウィットマンの娘であるシルヴィア(シルヴィア・ビーチにちなんで命名された)が後を継いでいる。作家を呼んだ朗読会など、文学イベントを開催しているとか。


 映画のロケにも使われたそうで、ウディ・アレンの映画「ミッドナイト・イン・パリ」にも出てきたという。また、「ジュリー&ジュリア」でも、夫の転勤でパリに来たジュリア(メリル・ストリープ)が英語の料理本を探しに、この書店へやってくる。どちらの映画も見たけど、この書店を訪れたことがなく、外観を知らないので気づかなかった…!

 今の日本人の感覚だと、「パリ~米国も近いじゃん」と思いそうだが、私のフランス留学中、クリスマス休暇(2週間)に帰国しなかったのは日本人と米国人だけだった。短期間に往復するには遠いし、航空券も高い。パリにこの書店が誕生したのは、店主が英国人ではなく米国人だったからなのだ。


シェイクスピア・アンド・カンパニー」書店の本、これから読んでみよう。

・初代店主シルヴィア・ビーチの本  

 

・元<タンブル・ウィード>だったジェレミー・マーサーの本 

 

【追記】本の感想

iledelalphabet.hatenablog.com