横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて

「フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて」Fisherman's Friends
監督:クリス・フォギン
出演:ダニエル・メイズ、ジェイムズ・ピュアフォイ、タペンス・ミドルトン

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 英国の南西部コーンウォール。港町ポート・アイザックを旅行で訪れた音楽マネージャーのダニーは、漁師たちのバンド<フィッシャーマンズ・フレンズ>のライブを偶然見かける。上司から、彼らと音楽契約を交わすよう命じられ――。

 


 アルバムをリリースするや、ヒットチャートを駆け上った奇跡の漁師バンドの実話。パブの経営難とか親子の話は映画用の脚色だと思われるが、教会で録音するくだりは実話らしく、<フィッシャーマンズ・フレンズ>の動画を検索したら、教会で歌っているものが見つかった。音響効果が抜群だとか。

 映画で漁師兼海難救助隊員たちの歌う歌は、「シーシャンティ(sea shanty)」と呼ばれる。シャンティは労働歌のことだが、海の上の労働歌とはつまり、船乗りなど船の上で働く人たちが仕事中に歌ってきたもの。

ja.wikipedia.org

 「Drunken Sailor」の曲は、上記Wikipediaにも楽譜が載っている。わりとポピュラーな歌みたい。

 17世紀とか、ずいぶん昔の歌が多いなあと思ったら、19世紀以降は蒸気船が登場するなど機械化が進んだからだとか。イギリス映画なので歌詞は英語だったが、おそらくフランスとか他の海洋国にも同じような歌があると思う。


 コーンウォールケルト文化を色濃く残す地域で、ふとしたところにイングランドへの反発心が現れる。エリザベス女王の誕生日に、テレビの生中継に出演するチャンスを貰うが、歌ったのはコーンウォールの愛国歌「Trelawny」! 

 独自のコーンウォール語もあり、一度は公用語から消えたが、最近になって復興の動きもあり、今では流暢に話せる住民も。たぶん、表向きは公用語から消えたものの、水面下では地元住民は細々と使い続けていたんじゃなかろうか。映画でも、アルウィンコーンウォール語を話す場面があった。

 

 よそからやってきた男と、地元の美女が恋に落ちる展開は、どこかヒュー・グラントの「ウェールズの山」を思い出す。

 リードボーカルのジムを始め、海の男たちは都会から来たダニーを翻弄するのだが、ロンドンのパブで即興で歌い、店中を熱狂の渦に包む場面は楽しかった。


 以下、余談。
 コーンウォール、昔旅行したっけ。当時の『地球の歩き方 イギリス』を見ると、ペンザンスやセント・マイケルズ・マウント(フランスのモンサンミッシェルの英国版)、セント・アイブス(アガサ・クリスティ関連)などに行っていた。トーキーに行かなかったのは不覚。

 映画の舞台のポート・アイザックって、どの辺りだろうと調べてみると、「アーサー王伝説」のティンタジェル城のそば。アーサー王関連でティンタジェル城を訪れたので、ポート・アイザックの近くも通ったかも。

 9月に訪れたのだが、コーンウォールの海はとても青く、きれいだった。ケルト文化が好きな人は、たとえばフランスのブルターニュや、英国ならウェールズ、それとアイルランドが好きな人は、コーンウォールの雰囲気も気に入ると思う。


 「Drunken Sailor」を本家の<フィッシャーマンズ・フレンズ>が歌った動画はいくつかあるのだが、海辺のライブに映画出演者が飛び入り参加したものを挙げる。紹介され、挨拶してるのはジェイゴ役のデヴィッド・ヘイマン。向かって左手にダニー役のダニエル・メイズがいる。

www.youtube.com


映画で歌われた曲を集めたアルバム 

Keep Hauling

Keep Hauling

  • アーティスト:Fisherman's Friends
  • 出版社/メーカー: Island Uk
  • 発売日: 2019/03/22
  • メディア: CD