横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

ママは何でも知っている

『ママは何でも知っている』
ジェイムズ・ヤッフェ 小尾芙佐訳 早川書房 

ママは何でも知っている (ハヤカワ・ミステリ文庫)
 

 皆さんの家の本棚に「いつか読もう」と思って、何年も過ぎた本はありませんか?
 古典的名作なのに「積ん読」になっている本はありませんか?
 私はあります ( ・`ω・´)キリッ (←いばるな)

 

 正月の帰省電車のお供に選んだのは、ジェイムズ・ヤッフェ『ママは何でも知っている』。あの<ブロンクスのママ>のシリーズです。長編もありますが、電車の乗り換えがちょいちょいあるので短編にしました。

 いわゆる「安楽椅子探偵」もので、毎週金曜日の夜、刑事のデイビッドが実家(NYのブロンクスにある)へ母親を訪ねる。ディナーの席で手がけている事件のことを話すと、わずかな手がかりをもとに、ママは謎を解いてしまうというもの。容疑者とは違う真犯人を挙げることもある。

 デイビッドの妻は、女子大出身のシャーリイという才媛なのだが、嫁姑バトルの火花を散らす。ママの推理に疑問を挟み、ツッコミを入れるのだが、それが推理の検証にもなっているという仕掛け。

 「本格推理」だと謎解きで、後出しで手がかりが出てきて「フェアじゃない!」となるが、これらの短編はすべての手がかりが示されているので、謎解きとしてはとてもフェア。

 事件関係者の心理を、ママが親戚(とにかく多い)の事例になぞらえ、想像するのだが、その方法は、セント・メアリ・ミード村の住人になぞらえる、アガサ・クリスティミス・マープルを思わせる。

 ママは未亡人だが、まだ50代。デイビッドとシャーリイは、デイビッドの上司のミルナー警部(やはり50代のシングル)をディナーに招待し、2人をくっつけようとする。このシリーズは後に舞台を変えて、長編が発表されるのだが、この大人カップルはどうなったんだろう。

 ママとデイビッドがユダヤ系移民というのが描写され、ある短編ではヒスパニック系移民の若者が出てくる。人種のるつぼニューヨークの一端だが、21世紀が舞台なら、もっと多様なルーツの登場人物になるだろう。

 

ママ、手紙を書く (創元推理文庫)

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ママは眠りを殺す (創元推理文庫)

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ママのクリスマス (創元推理文庫)

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