横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

アール・デコの造本芸術 高級挿絵本の世界

 日比谷図書館で開催中の「アール・デコの造本芸術 高級挿絵本の世界」を見てきた。フランス文学者・鹿島茂さんのコレクションで、20世紀初頭の挿絵本を展示したもの。

 

www.library.chiyoda.tokyo.jp

 

 挿絵は木版画で、腕のいい職人たちが技を発揮したが、第一世界大戦勃発を境に職人が離散したり、ときには編集者の戦死によりその助手が担当者に代わるなど、事情が変わったという。

 図柄にはロシア・バレエの流行や、東洋趣味など、その当時人気のあったものが採用されている。文章部分のレイアウトも工夫がこらされている。

 絵もかわいらしいが、活字も色々種類があって見た目にも楽しい。カリグラフィーの技術が生かされ、文頭の1文字目が絵と一体化していて面白い。たとえば「P」の文字の部分にペガサスが描かれていたり。

 展示とは無関係だが、例を挙げてみる。

 

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  頭文字のカリグラフィー例
 (画像はネットで見つけたもの)


 展示されていた本は、いずれも仮綴じ本。購入者が好みの装丁で仕上げることを前提として、綴じていない状態で販売されていたという。カスタム装丁なんて、お金と時間の余裕がないとできない高雅な趣味だ。

 

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