横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

ソーイング・ビー シーズン1

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 NHK Eテレで始まった、英BBCの「ソーイング・ビー」は、裁縫名人を8人集めた「裁縫バトル番組」(公式HPより)。審査はファッション業界のプロが行う。挑戦者にはミシンや作業台を1台ずつ用意し、布地などは会場内にあるものを自由に選べる。Aラインスカート、シャツのリメイクなど毎回テーマを決めて、制限時間内に完成させ、出来を競うというもの。

  Eテレの放送時間は木曜夜9時で、この番組の後には「すてきにハンドメイド」を放送しているので、お裁縫好きをターゲットにしたのか。ワタシは手先が不器用な、お裁縫好きとはほど遠い人間だけど、英国のこういう素人を集めて何かやる(たとえばDIYとか)番組ってけっこう面白いので、見ることにした。


 英国中から集まったメンバーには女性だけでなく男性もいて、年齢も80代から20代までと幅広い。最初のお題がいきなりスカートだったので、さすがに男性陣は「作ったことないよ」と困惑していた。ピアスしまくりの男性は、実はコスプレイヤーで、休日には18世紀の衣装を作ってイベントに参加しているという。彼はスカートのファスナーを縫い付けるのに苦戦していて、「そりゃ、18世紀の衣装にはファスナーないもんな」と同情。でも男性たちは、ワタシよりずっとずっと手先が器用だったよ。

 女性たちは、自分で縫った服をよく着ているとのこと。「その服、どこで買ったの?」と聞かれることもあるそうで、デザインも素敵だけど、ある意味オーダーメイドなわけだから、彼女の体形にぴったりなんだと思う。中には、子供たちによく服を作っていたというお母さんもいた。写真では3人の子供たちが、お揃いの布地で作った服を着ていてかわいらしかった。

 そういやうちの母も、ミシン踏んで服を作ってくれたっけ。実家のアルバムには、やはり同じ生地で作った、お揃いの服を着ている子供たちの写真が貼ってある。今から40年ほど前の話だから、当時は日本でも既製服が簡単に手に入りにくくて(デパートで買うと高い)、家庭で作っていたのだ。英国も日本も、今じゃファストファッション全盛で、既製服が安く手に入るから、隔世の感がある。


 BBCの放送では1回×60分なのを、Eテレでは2回×30分に分けている。1回戦はAラインスカートで、市販の型紙を使っていた。皆、柄の美しさを優先して薄い生地ばかり選ぶ。そのため、裏地をつける時間がほとんどないという事態に。審査員は、裁縫の基本的な技術があるかをチェックしていたので、裏地なしでも大目に見てもらえた。2回戦で、シャツの襟のリメイクに突入したところで、続きは次回に。ただ、1時間しかなく、皆手こずっていた。

 この番組、英国では2013年に始まり、2019年現在シリーズ5まで作られている。Eテレの放送はシーズン1だから、好評ならシーズン5まで放送されるのかな。


 以下、余談。
 昔、英国に数か月滞在した際に、こういう素人さん参加型番組を見ていた。放送局も題名も忘れたけれど、よく覚えているのが、2組の家族がお互いの部屋をリフォームするという番組。日本だと「ビフォー&アフター」か。でもこっちの番組は、プロの建築家がついているとはいえ、作業するのは素人。しかも、施主の予想をはるかに超える(良い方にも悪い方にも!)インテリアに仕上がっているという。あの後どうしたんだろう。皆、文句を言いながら住んだのか、はたまた自分でもう一度リフォームし直したのか。

 もう1つ、うっすら覚えているのは「Looking Good」という番組。一般人の女性に、プロの美容家だかファッションの専門家がアドバイスしていた。服装とか、証明写真を撮る時の工夫とか、おしゃれ下着の買物に同行したり。

 後年、日本でも米国の「ティム・ガンのファッション・チェック」が放送されて(やはりEテレ)、番組構成、変身させる手段や登場する専門家のジャンルは違えど、なんだか似たようなことをやってるな~。と思った覚えがある。

 

【追記】

 タイトルの「ソーイング・ビー」(Sewing Bee)の語源が第5回で判明。第二次世界大戦中の英国で、女性たちの協力で、前線の兵士に衣服を縫って送るという活動があった。その女性たちのことを「ソーイング・ビー」(直訳は「お裁縫蜂」か)と呼んだという。やがて布地など物資が不足するようになり、新しい布地の代わりに、兵士向けだけでなく一般人も古い服をリメイクするようになったとか。

  

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