こんにちは。
私、ミセス・まーぶる。
あの有名な「ミス・マープル」とは無関係ですよ。
「ミス・マープル」のドラマは、ジョーン・ヒクソン版が良かったわ。
この文章も、山岡久乃さんの声で読んでね(←オイオイ!)。
というか、お好きなベテラン女優さんの声でアテレコしてちょうだい。
年のせいか、最近よく昔のことを思い出すんですよ。
あれは1999年の9月だったわ。
皆でロンドンに行ったんですよ。
シャーロック・ホームズ像が建つというので、世界中からシャーロキアンが集まってね。除幕式を開催したんですよ。
ホームズ像が設置された場所は、地下鉄のベイカー・ストリート駅のそばよ。
除幕式の前日に見に行ったら、周りを覆いで囲われていたわ。
「この中にもうホームズ像がある……!」
よっぽど覆いを壊しちゃおうかと思ったわ。
やらなかったけれどね!
除幕式当日は、ロンドン市のお偉いさんが来てね、スピーチをしたの。
シャーロック・ホームズのお膝元なら、誰もがホームズに理解と愛着があるはず。
そう思うでしょ?
とんでもない!
このお偉いさんたら、世界中から集まったシャーロキアンの前で
「シャーロック・ホームズは架空の人物ですがー」
なんて言うもんだから、大ブーイングよ!
今でいう”KY”ってやつね。
シャーロキアンにとって、ベイカー街は聖地なのに。
除幕式の前後数日間、ロンドンでは色々と関連イベントがあったのよ。
ホームズの演劇が上演されたり、パーティーが開かれたり。
私もあるパーティーに参加したんだけど
日本とフランスのシャーロキアンの一部有志が集まったものなのよ。
何がきっかけなのか今となっては思い出せないけど
たぶん、渡英する前に、フランスのお友達にメールを書いたんだと思うわ。
「今度、ロンドンの除幕式に行きます」ってね。
そこから話が転がって、なぜか「せっかくだから、日本とフランスのシャーロキアンで集まろう」という展開になって。
日本の団体の代表者に伝えると
「まーぶるさん、フランス語できるから連絡係になって」
と言われちゃってね。
毎日仕事から帰ると、夜中にフランス語のメールを書いたわ……(遠い目)。
当時まだ新人会員だったのに、なんでそうなったかですって?
そりゃ、代表者がどんどん新人にもお仕事を割り振る方だったからよ。
私、他にも別件でちょっとしたお仕事を振られたことあったわ。
他の人に聞くと「よくあること」ですって……。
あっという間に月日が流れ、パーティー当日。
直前にドレスコードを巡って「服がない!」とドタバタしたけれど
事前に参加希望した人は、皆なんとか行けたわ。
ドレスコードがあるから、ヨーロッパって油断できないわ。
この日仏交流会には"Paritsu(パリツ)"という名前が付けられたわ。
コードネームみたいでしょ。
フランスの首都"Paris"と、ホームズに出てくる日本の武術"Baritsu"を合わせたの。
日仏交流会は和やかな雰囲気だったわ。
片言の英語だけど、あちこちでおしゃべりの花が咲いていたわ。
ホームズという共通の話題のおかげね。
日本でもフランスでも、グラナダTV版のホームズ・ドラマが放送されていたから
ジェレミー・ブレットの話題で、女性陣はキャッキャウフフと大盛り上がりよ。
今だったら「シャーロック」で盛り上がったでしょうね。
今なら分かるけれど、日本人にとってもフランス人にとっても、英語は外国語でしょ?
英国人て、私たちのような外国人にも容赦なく早口で英語を話すけど
これが外国人同士だと、お互いゆっくり英語を話せるもの。
会話のペースがちょうどよかった。
除幕式では、コスプレしてる欧米人を何人も見たわ。
この晩も、フランスの人たちが19世紀の衣装を身につけていて、素敵だったわ。
さすがファッション大国、センスが良い。
日本人よりも足が長くてスタイルが良いしね。
間近で完璧な例を見て、つくづく思ったわ。
日本人は絶対にこういうコスプレしちゃダメだって。
身長、体形、着こなし、すべてが違う。
よほど欧米人みたいなスタイル抜群の人じゃない限り、こういう格好は似合わない。
肝に銘じたわ。
絶対、ヴィクトリア時代のコスプレなんかしないって。
当時の格好をしろと言われたら、着物を着ますよ!
当日の記憶は、ワインのせいでちょっとぼやけているの。
立食式で軽食しか出ないと思わなかったから、お腹すかせて行っちゃったのよ。
空きっ腹によくワインが回ってね。
酔ってたのに、よくフランス語が話せたもんだわ。
おほほー。
フランス側にはJean-Pierre Cagnatさんという有名なイラストレーターがいて、この日を記念して絵を描いてくださったの。服がマオカラーなのは、ご愛敬ね。
あれから20年たつけど、今でもフランスのお友達は手紙やメールの最後にこう書いてくれるの。
Vive le Paritsu !
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