横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

ロケットマン

ロケットマン」Rocketman
監督:デクスター・フレッチャ
出演:タロン・エガートンジェイミー・ベル

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 他の記事にも書いたけれど、このところ映画界は伝記映画が花盛り。
 今では「誰の」伝記映画なのかよりも、「どんな風に」撮ったのかが問われている。
 そんな気がする。

 

 エルトン・ジョンの半生を描いた「ロケットマン」は、本人も企画に関わり、キャスティングにも関わり(タロン・エガートンを主役に指名した)、ミュージカル仕立てにするという構成。エルトンのヒット曲の数々を、その時の登場人物の心情に合わせて使い、歌わせる。

 クイーンのフレディ・マーキュリーを描いた「ボヘミアン・ラプソディ」と違い、モデルとなった人物の存命中に撮影されているからか、”聖人化”は避けられている。むしろ本人が関与しながらも、過去の辛い体験も、美化せず洗いざらい吐露されており、「え、それ言っちゃっていいの!?」と、こちらが思ってしまうほど。

 「キングスマン」で主演したタロン・エガートン(エジャトンの表記もあるが、この記事ではエガートンで統一する)が、こんなに歌える俳優さんだとは知らなかった。歌声と、「若い頃のエルトンに似ている」ということで、抜擢された。


 王立音楽院クラシック音楽を学び、ソウルグループのバックバンドを務めた経験が、エルトンの音楽のベースとなり、幅の広さにつながる。耳コピー能力の高さ、曲を書くのがとても早いなど、若い時から天才ぶりを発揮する。唯一、作詞が苦手で、作詞家のバーニーとの出会いがメジャー・デビューへの道を開く。彼らは50年にわたり、コンビを組んでいるという。

 バーニー役は「リトル・ダンサー」で主演したジェイミー・ベル。子役は大成しないと言われるけれど、グレたりせず好青年に育ち、今も立派に俳優業をやっている(←親戚のオバちゃん目線)。

 

 1980年代って、ドラッグやエイズで心身ボロボロになるアーティストのニュースをよく聞いた覚えがある。ゲイであることをカミングアウトするのは勇気がいる時代で、それに加えて、若くしてスターになってしまった者特有の孤独感から「良からぬもの」に手を出してしまう。フレディ・マーキュリーエイズで命を落としてしまったけれど、エルトンは危ういところで依存症のリハビリ施設に駆け込み、助かった。


 映画の中ではたくさんのヒット曲が使われたが、ワタシが「よく知ってる! この曲好き!」と言えるのは、「Your Song」(邦題は「僕の歌は君の歌」)のみ。映画「ムーランルージュ」で、ユアン・マクレガーが歌っていたのが印象的だった。

 でも、他の曲はあまり知らなくて。後で確認してみると、エルトンがこれらのヒット曲を発表したのは主に1970年代。ワタシが洋楽を重点的に聞いていた1980年代だと「悲しみのニキータ」を覚えているぐらい。なので、好きな曲だらけの「ボヘミアン・ラプソディ」と比べると、音楽的に深くのめり込めたとはいえないが、それでも歌詞の深さ、曲の美しさは伝わってきた。


 クリスマス・シーズンに流れる英国のCMで、エルトンの「Your Song」が使われている。現在から若い時にどんどん遡っていくのだが、ある時期のエルトンがタロンとそっくり。

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 こちらはエルトンが英国でバラエティ番組に出演した時の映像。いきなり「これに曲をつけてくれ」と無茶ぶりされるのだが……。エルトンの天才ぶりがよく分かる。

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