「さらば愛しきアウトロー」The Old Man & the Gun
監督：デヴィッド・ロウリー
出演：ロバート・レッドフォード、シシー・スペイセク、ケイシー・アフレック
米国の名優であり、映画監督としても名高いロバート・レッドフォードが、本作をもって俳優を引退する。俳優としての長いキャリアの中で、有名なのはポール・ニューマンと共演した「明日に向かって撃て！」と「スティング」だろうか。高校生の頃、「スティング」を見て、ストーリーの面白さもさることながら、主演２人のカッコよさにほれぼれした覚えがある。
彼が監督した作品も、結構見ていた。「リバー・ランズ・スルー・イット」や「クイズ・ショウ」などなど。
＜あらすじ＞
フォレスト・タッカーは米国に実在した銀行強盗。何度も脱獄を繰り返し、銀行では銃をちらつかせるだけで発砲はせず、誰も傷つけない。被害にあった銀行員たちは口を揃えて「紳士でした」と言う。
あるとき、刑事のジョン・ハントは、自分が居合わせた銀行で「今しがた、銀行強盗が発生しました」と言われ、ショックを受ける。刑事としての意地とプライドから、独自に捜査を始める。すると、大きく報道されてはいないが、近隣の州でも似たような老人による銀行強盗が起きていたことが判明する。テレビの取材に対しジョン・ハントは、老人ばかりの強盗一味を「黄昏ギャング」と呼んだ。
その頃、フォレストは牧場を経営する未亡人ジュエルと知り合う。彼女は、フォレストが堅気ではなさそうだと薄々気づくが、彼の魅力にあらがえない。
フォレストと仲間は、大きなヤマに手を出すが――。
レビューというよりは、とりとめのない感想を。
原題"The Old Man & the Gun"は、ヘミングウェイの "The Old Man and the Sea"（『老人と海』）のもじりだろうか。
若い頃に美男子だった人は、おじいちゃんになっても美男子。こんなにカッコいい80代、なかなかいない。背筋もピンとしていて、まだまだダンディ。この役はレッドフォードにしか演じられないんじゃないか。
イケメンで名優で、おまけに監督としても成功しているなんて完璧じゃないか！ 今でこそ、俳優と監督を兼業して、どちらも成功している人は何人もいるけど、レッドフォードはその草分け。
ジュエル（シシー・スペイセクも、いい年のとり方をしている）が馬を所有していることから、フォレストも馬とふれあい、乗馬する場面が出てくる。そういう場面が本当、絵になる。昔の出演作を思い出させる。
街のダイナーで、刑事ジョン・ハントとフォレストが偶然すれ違うのは、たぶん創作。でも、追う側と追われる側の間に、魂の交流のようなものが生まれるのは、映画「逃亡者」のジェラード（トミー・リー・ジョーンズ）とキンブル（ハリソン・フォード）だったり、「ルパン三世」の銭形警部とルパンだったりでも見られた光景。フォレストの場合は、紳士かつアウトローぶりがそれだけ魅力的だったということか。
若い頃の写真や、脱獄シーンの映像は、過去の映画から再利用したんじゃなく、レッドフォードの若い頃にそっくりな若手俳優を探してきて再現しているのだろうか。「ブラッド・ピットに演じてもらえばいいのに」と思ってしまった。「リバー・ランズ・スルー・イット」でブラッド・ピットが主演した時、「若い頃のロバート・レッドフォードにそっくり」と言われたし。今だと、ちょっと風貌が違ってきてしまったけど。
ジュエルにこれまでの脱獄リストを渡し、回想シーンになると、フォレストの若い頃からダンディな中年、そして老人になるまでが走馬灯のように流れるが、「スティング」に出演してた頃からレッドフォードを見てきたこちらには、これまでのレッドフォードの出演作をまとめて振り返っているような不思議な感覚がする。
ギャング仲間の役で、トム・ウェイツが出ている！ 枯れた声はそのままに、これまた渋い役者になっちゃって！
フォレスト・タッカーは何度も脱獄を繰り返していて、それでいて銀行強盗でも人を傷つけていない、ユニークなキャラクター。俳優最後の仕事に、こんなアウトロー役を選んだロバート・レッドフォードの決断に拍手を送りたい。
こんなサイトを見つけた。特に女性は「そうそう、そうなの～！」と頷くこと請け合い。
www.cinematoday.jp 映画監督、プロデューサーとしての業績のほか、サンダンス・インスティテュートの設立、そしてサンダンス映画祭の開催など、若手育成の功績は大きい。
大好きな映画「スティング」より。
ピアノ曲「エンターテイナー」も大好きだった。
