横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

日英翻訳のコツ 画像検索を使う

 インバウンド観光客が増えているおかげか、時々、観光関連の日英翻訳のお仕事を頂きます。

 自分用メモも兼ねて、過去の事例の中から差し支えない範囲で、日英翻訳の際のコツというか注意点を書いておきます。


 最近よく言われるのが「直訳調を避けてほしい」ということ。

  たとえば、懐石料理のメニューであれば、「フランス料理のメニューのような、おいしそうな表現を心がけてほしい」とか。

 日本料理なのに、「フランス料理のメニューのような」とは?

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(イメージ)

 とある仕事でのことですが、既にある英語メニューを渡され、「これをリライトしてほしい」と言われました。懐石料理だったので、1つの皿や小鉢に色々な食材や料理が美しく盛り付けられています。「フランス料理のメニューのような」の意味が分かりました。

 既存の英語メニューは、誰が訳したのか分からないけど(店の人、つまり翻訳の素人さんだろうか)、辞書の単語をそのまま並べた直訳で、あまり「おいしそう」とは感じませんでした。そのため、フランス料理で例えると「オマール海老の〇〇添え アメリケーヌソース」みたいな、もう少しメニューらしい、さらに言うと「おいしそう」な英語メニューが求められている訳です。

 また、店頭にサンプルが置いてあったり、メニューに写真がついている定番メニューではなく、月替わりのお品書きでした。毎月変わるので、いちいち写真をHPやメニュー表に載せていません。言葉だけで「どういう風な料理か」を伝える必要があります。

 日本料理独自の食材は英語でなんと言うのか、調べれば適切な英名が見つかります。ただし、それを料理名と組み合わせたとき、単なる味気ない羅列にならないよう注意します。メジャーな料理で、既に英語での定訳があれば、もちろんそれを使います。

 まず、クライアントの店がHPに料理の写真をアップしてればそちらを確認しますが、なければ別のHPなどで、似たような料理の写真を確認します。

 たとえば同じ「汁物」でも、透明な「すまし汁」なのか、どろっとした「すり流し」なのか、全然違いますよね。「汁物」は英語だとさっくり言うと「スープ」ですが、澄んだ「コンソメ」なのか、とろみのある「ポタージュ」なのかで別物ですよね。


 次に、画像検索を使って確認すること。

 英語に置き換えてみたら、料理の英語名で画像検索を行い、どんなものがヒットするか確認します。だいたいイメージどおりのものがヒットすればまあOK。でも、まるで別物の料理ばかりがヒットしたら、その英訳ではうまく伝わらないということ。表現をもうひとひねりする必要があります。

 辞書の表現はいったん離れて、なるべくイメージに近い表現を探してください。たとえば「和え物」を、食材の組み合わせや調理方法によっては「マリネ」や「サラダ」と表現するのもアリでしょう。

 「揚げ物」、「〇〇の~~揚げ」なども、一律に「fried 〇〇, ~~style」で表現できるわけじゃありません。油で炒めたものも「fried」と表現するからです。また、ただの素揚げか、何かまぶしてあるのかでも違ってきます。衣の種類も色々あります。過去に、衣のついた揚げ物を「fritter」と英訳したこともあります。日本料理の揚げ物と洋食のフリッターでは衣の材料が違いますが、どんな料理かイメージしやすいので、まあ許容範囲でしょう。

 このときは懐石料理の中の1品として出てきたので、「fritter」を使いました。最近だと天ぷらは「Tempura」で通用するので、天ぷらはそのまま「Tempura」でも大丈夫でしょう。


 日本料理を例に挙げましたが、観光地の情報についても同じことが言えます。まず日本語のイベント公式HPや観光協会のHPを確認する。正式な英語名称がないか確認し、なければ、ぴったりの表現を探します。この場合も、画像検索で確認をします。

 けっこう曲者だったのが「Lantern」です。石灯籠→「stone lantern」、ちょうちん→「paper lantern」ですが、それでは、「竹を使った灯り」類をとりあえず「bamboo lantern」として検索すると…。

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 このように、何種類かヒットします。

 

 現物がどういうものを指しているのか、日本語の公式サイトなどを見て確認したうえで、ぴったりな表現を探します。