『Tintin à Baker Street』
Bob Garcia著 Mac Guffin Editions刊
本書は仏語圏のヒーロー・少年記者タンタンと、シャーロック・ホームズを比較・考察したもの。相違点はともかく、共通点はそんなにないだろう……と思いきや、意外とあるんだな。
発表時期だが、コナン・ドイルが『緋色の研究』を発表したのが1887年。『タンタンの冒険』シリーズは、ベルギーの漫画家エルジェが1929年に発表したのが最初。日本でも何冊も和訳が出ており、「バンドデシネ」というと、私は真っ先にタンタンを思い出す。
本書の「友情」の項では、おなじみのホームズとワトソンの友情に対して、タンタンとハドック船長の山上で危機に遭遇した場面を引用し、二人のきずなを紹介する。あ、もちろんタンタンと犬のミル―(英語だとスノーウィ)のきずなも。
「アクション」「書斎」の項では、ホームズの挿絵とバンドデシネを比較しているが、犯人逮捕の場面の激しいアクションや、調べものの際に書斎や文献をあたるホームズとタンタンの姿が、とにかくかぶる。やはり、エルジェはホームズを意識していたのか?
もっとも、タンタンの活動はもはや記者というより探偵の領域なので、どうしてもホームズと行動がかぶるのかもしれないが。
「暗号」の項より
そのせいか、タンタンは「シャーロック・ホームズ」と呼ばれることもある。
ホームズのバンドデシネで、『Baker Street』(Barral & Veys)シリーズというコメディがあるのだが、その中の『Sherlock Holmes et le club des sports dangereux』にはSmithとSmissという瓜二つの人物が登場する。そう、タンタン・シリーズに於けるインターポールの刑事コンビ(赤の他人なのに瓜二つ)Dupond とDupont(日本語版ではデュポンとデュボン)へのオマージュなのだ。ホームズ→タンタン→『Baker Street』と一周した感じ。
ホームズと比べると数は多くないが、タンタンも何度か実写映画化されている。ふと、モーションキャプチャを使った「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」(2011年)を思い出したが、本書は2005年刊行のため、掲載されていない。
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ところで、エルジェの博物館なんてあるんだね!
Musée Hergé