横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

失われた時を求めて

 11月5日放送のNHK Eテレグレーテルのかまど」で取り上げたお菓子は、マルセル・プルースト失われた時を求めて』のマドレーヌだった。

f:id:Iledelalphabet:20181103140730p:plain

  大人になった主人公が、紅茶にひたしたマドレーヌを食べた途端、子供時代を思い出し……という、あの有名なマドレーヌである。

 バンドデシネではこんな感じ。

f:id:Iledelalphabet:20181103141032j:plain

 

f:id:Iledelalphabet:20181103141055j:plain


 フランス文学専攻だけど、この作品はあまりにも長いので、ずっと読まずじまい。「プルースト失われた時を求めて』を読む」 (NHKシリーズ NHKカルチャーラジオ・文学の世界)というガイド本が出て、ようやく着手。ラジオを聞かなくとも分かる、便利なガイド本だった。講師は翻訳を手掛けた鈴木道彦さん。 

プルースト『失われた時を求めて』を読む (NHKシリーズ NHKカルチャーラジオ・文学の世界)

プルースト『失われた時を求めて』を読む (NHKシリーズ NHKカルチャーラジオ・文学の世界)

 

  とっかかりに集英社の抄訳(鈴木道彦訳)を読んだけど、バンドデシネ(仏語)で読んでたら、知らない場面がどんどん出てきて、あわてて完訳を読み直した。「漫画なら絵があるから、本を読むより分かりやすそう~」と思ったのを後悔。

 ところで、バンドデシネ白夜書房から和訳が出たのだが、なぜか途中まで。出版社が変わっても良いから、最後まで出して頂きたいのだが……。 

失われた時を求めて フランスコミック版 第1巻 コンブレー

失われた時を求めて フランスコミック版 第1巻 コンブレー

 

  

失われた時を求めて フランスコミック版 第2巻 花咲く乙女たちのかげに1 海辺への旅

失われた時を求めて フランスコミック版 第2巻 花咲く乙女たちのかげに1 海辺への旅

 

 
 この小説は、何度か映画にもなっている。見たことあるのは「見出された時~『失われた時を求めて』より」ぐらい。主人公の役はイタリア人俳優で、声は吹替になったけど、外見がマルセル・プルーストにそっくりだった。オデット役はカトリーヌ・ドヌーブ、シャルリュス男爵はジョン・マルコヴィッチ、ジルベルト役はエマニュエル・べアールと、とにかく豪華なキャスティングだった。 

見出された時~「失われた時を求めて」より~ [DVD]

見出された時~「失われた時を求めて」より~ [DVD]

 

 

f:id:Iledelalphabet:20181103141943j:plain

  3巻「花咲く乙女たちのかげに」窓の外の少女がアルベルティーヌ。

  4巻「スワンの恋」まで買ったけど、フランスでは5巻まで出た。 

f:id:Iledelalphabet:20181103142141j:plain

  女中フランソワーズは料理名人

 

 ところで、「グレーテルのかまど」で、子供時代を思い出させるものを<マドレーヌ>と呼び、フランス人に「あなたにとっての<マドレーヌ>は?」と街頭インタビューしていた。ラベンダーやオリーブなど回答はさまざま。私だったら、「もみ殻を燃やす匂い」と答えるかな。秋の田んぼで稲刈りが終わった後、もみ殻を山にして燃やすのだ。秋に帰省すると、どこかの田んぼでたいがいもみ殻を燃やしている。

 

 番組ではイリエ=コンブレの街も紹介された。もとはイリエだったが、プルーストの小説の舞台ということでイリエ=コンブレに改名された。ここは行ったことがない。せっかくパリから近かったんだから、行けば良かったなあと思い、調べていたら、こちらの記事を発見。

precious.jp そうか。巨匠ヴィスコンティも『失われた時を求めて』を映画化する構想があったのか。見てみたかったな。「山猫」でイタリア貴族社会を描いたように、フランス貴族社会を華やかに描いただろう。