横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

愛するあなた恋するわたし 萩尾望都対談集2000年代編

『愛するあなた恋するわたし 萩尾望都対談集2000年代編』
萩尾望都 河出書房新社 

愛するあなた 恋するわたし: 萩尾望都 対談集 2000年代編

愛するあなた 恋するわたし: 萩尾望都 対談集 2000年代編

 

  「萩尾望都SF原画展」(記事はこちら)に行ってから、萩尾さんの本を色々と読んでいる。これはタイトル通り、2000年代に漫画家、作家、映画監督のゲストと対談したもの。他にも1970年代、1980年代、1990年代の対談本が出ている。

 

 話題は多岐にわたり、漫画のこと(ご本人だけでなく、別の漫画家の作品も登場する)はもちろんだが、創作のことや家族のこと、同業者である漫画家とは描画技術のことなど。

 

 どの対談も面白かったが、読みながら付箋を貼ってしまった箇所がある。

 漫画家・吾妻ひでおさんとの対談では

萩尾「私の半分くらいはSFでできています」

 この箇所は、先日原画展を見に行ったので、ものすごく納得。

 作品の舞台については

吾妻「萩尾さんの作品は外国が舞台のものが多かったけれど、これ(『バルバラ異界』)は舞台が日本で、それでも違和感がなかったのが不思議だったな」

萩尾「私はマンガを描きながら妄想に耽るタイプなんですが、昔は、日本が舞台では妄想に耽ることができなかったんですよ。
    ……
   でも、日本はダメだったの。それがこの作品を描き始めて、日本でも妄想に入れることがわかりました」

  それで海外や宇宙が舞台の作品ばかりだったのか! かくいう自分も外国の小説をよく読み、外国映画ばっかり見ている。日本が舞台だと、非日常の世界へ飛べないからなー(日本の漫画は読むけど)。

 順番が前後するが、ヤマザキマリさんとの対談では

ヤマザキ「萩尾先生のマンガって、外国を舞台にしたものが多いじゃないですか。あの頃、萩尾先生のマンガにいざなわれて海外へ出て行った人たちって、私だけじゃなく結構いたと思うんですよ」

 はいはーい、ワタシもそうでーす!

 萩尾さん自身は、終戦後の日本に入ってきたハリウッド映画の影響を受けているとのこと。

萩尾「アメリカ映画に影響されたせいで、私たち世代の少女マンガの人って結構、海外を舞台にしたマンガを無国籍風に描く人が多かったと思うんですよ」
  ……
ヤマザキ「そうか、(日本では)あり得ないことが起こる世界だから、日常ではない外国らしき場所が舞台だったんだ」
萩尾「ところが、現実がマンガに追い付いてきたというか。……もう舞台が日本じゃなくてもよくなったんです」

 このくだりは、先の吾妻ひでおさんとの対談とリンクする。

 

 好きなSF映画

萩尾『ブレードランナー

 と回答している。萩尾さんは「ブレードランナー2049」(記事はこちら)については、どんな感想を抱いたのだろうか。いつかどこかで読む機会があると良いのだが。


 よしながふみさんとの対談では、川原泉さんの『笑う大天使(ミカエル)』が登場して吹いた。「台詞が長い漫画家は誰か?」という文脈で登場したのだが、引用したページが、なんと主人公ら(司城史緒、更科柚子)が『ポーの一族』で盛り上がる場面! 

 『笑う大天使』読んだから、よく覚えている。引用では省かれているが、この後『ポーの一族』を読んだことない斉木和音が「プーの一族? くまのプーさんのご家族の物語だろーか」と呟く(罰当たりな)場面が続く。載せれば良いのに。さすがに編集部が自重したのだろうか。

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 もしどれか一つ、対談の場に列席しても良いよと言われたら、ダントツで参加したいのが清水玲子さんの回。ワタシ自身も『伊賀の影丸』を『伊賀のカバ丸』と間違えたから……ではなく、なんといっても、中性的なキャラクターと美少年の話題で盛り上がった回だから!

 清水玲子さんも、「ジャック&エレナシリーズ」のロボットのエレナとか、『月の子』のベンジャミンとか、魅力的なキャラクターを描いている。『11人いる!』のフロルの、性別が決まっていなくて成長後に性別が選べるという設定には、インパクトを受けたという。

 清水さんの作品は、対談で名前が出たような中性的な美少年・美青年も登場するが、『輝夜姫』の晶や『竜の眠る星』のモニークといったボーイッシュな美少女も登場する。


 本書に登場する漫画の数々、見ていたら読みたくなってしまった……!
 萩尾さんの本を始め、今、読みたい本が山ほどあってだな(嬉しい悲鳴)。