横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

セラヴィ!

セラヴィ!」Le Sens de la fête

監督:エリック・トレダノオリビエ・ナカシュ
出演:ジャン=ピエール・バクリ、ジル・ルルーシュ

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 「最強のふたり」「サンバ」の監督コンビによるコメディ。ウェディングプランナーのマックス(ジャン=ピエール・バクリ)は、引退を考えていた。古城でのウェディングを担当し、スタッフを集めるが、ポンコツ揃いな上にトラブル多発で、マックスの胃をキリキリさせる。なんとか乗り切ったかに見えたが、とんでもないトラブルが発生し……。

 「セラヴィ!(C'est la vie !)」は海外向けのタイトルで、フランス本国では「Le Sens de la fête」というタイトル。「宴の行方」といった意味か。

 

 ヨーロッパの結婚披露宴て、とにかく大規模で長時間。住宅街から離れたお城のような会場を借りて夜通し宴会……というのもむべなるかな。「最高の花婿」(記事はこちら)では、地方のお屋敷に住むブルジョワ一家だったので、自宅の庭で披露宴を開催できた。日本の結婚式・披露宴もお金がかかるけど、フランスも相当かかりそう(冒頭、別のカップルが値切りまくるほど)。

 たぶん、本作の若夫婦も、資産家もしくは結婚資金をしっかり貯金してきたのだと思う。新婦は高校教師だし。あの髭がガレス・サウスゲイト監督に似た新郎、スピーチを3時間もやるほどの変人だけど、職業はなんだろう。そして新婦はそんな彼のどこに惹かれたのだろう。


 なんというか、フランス人のトンでもないところをかき集めたような印象。スタッフは自己主張が激しく、ケンカになると引かないし(日本人のように協調性がないし)、そしてどんな時も恋愛第一主義だったり……。もちろん、正規スタッフのようなプロはきっちり仕事するんだけど、臨時で集めたスタッフがあれこれやらかす、という流れ。

 フランス人じゃない観客が見ると「フランス人て……」と思うが、スタッフの中にスリランカ人が2人いて、外国人の視点でフランス人についてあれこれツッコミ入れているのがおかしい。なんだ、フランス人自身(監督たち)も気付いているんじゃん。


 マックスの義弟が何者なのか謎だったのだけど、徐々に明らかになっていく過程が巧み。新婦の元同僚だったが、なぜ今は無職なのか、またなぜフランス語の文法に厳しいのか(元国語教師だから!)。妻(彼にとっては姉)との関係に悩むマックスに、身内だからこそズバリ指摘をしたり。ただの困った奴じゃなく、大事な役回りを演じる。

 初めはダメな奴らの集まりと思われていたのが、あまたのドタバタを経てハッピーエンドで終わり、「ああ、よく笑ったな」。途中、劇場のあちこちで笑い声が起きていた。

 

 フランスのコメディって、ちょっと(いや、結構)ブラックな部分があるんだけど、本作は下品なところ(下ネタと放送禁止用語)もないし、ブラック度もそれほどきつくないし、日本でももっとあちこちで上映したら良いのに。