横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

アーカイブ:アヴィニヨン~ホームズの先祖ヴェルネゆかりの場所

 もうすぐ夏休みシーズンですね。海外へ行かれる方もいらっしゃるでしょう。

 以前「アーカイブ」として他媒体の記事を紹介しましたが、未紹介だった部分を載せます。今回は、シャーロック・ホームズの先祖とされるヴェルネ家ゆかりの街、南仏アヴィニヨンです。

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 「ギリシャ語通訳」で、ホームズの祖母はフランスの画家ヴェルネの妹であると明かされています。ヴェルネ一族は画家を輩出しています。絵の分野は次の通り。

 

クロード=ジョゼフ・ヴェルネ(1714-1789年):風景画、海洋画
カルル・ヴェルネ(1758-1836年):クロード=ジョゼフの息子。動物画、風刺画
オラス・ヴェルネ(1789-1863年):カルルの息子。戦争画肖像画など

 年代的に、ホームズの祖母の兄である「ヴェルネ」はオラスではないかという説が有力です。

 Jean=Jacques Sirkis『La grand-mère de Sherlock Holmes』(シャーロック・ホームズの祖母:未訳)では、カルルの妹エミリーがホームズの祖母という設定になっていたけど、まあこれはレアケースかな。

 

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クロード=ジョゼフ・ヴェルネの生家(17, Rue Bonnetrie)

 ボネトリ通りは旧市街にある。1階は現在(1999年当時)ブティックになっている。店の人に道を尋ねたら「ここがクロード=ジョゼフ・ヴェルネの生家だ」と教えられ、熱心に説明してくれた。今の持主がこの家を手に入れたのは1年前で、「それまでヴェルネの傍系の子孫が住んでいた」という(今はパリに引っ越したとか)。以前はプラークが付いていたらしい。
 クロード=ジョゼフ・ヴェルネは1714年生まれなので、まる2世紀昔の人物だが、こうして話を聞いていると、それ程昔の人に思われない。

 <フランス・ホームズゆかりの場所>「ホームズの世界22」所収(1999年)

 読み返して思ったけど、今だと生誕300周年を超えてしまった。

 


カルヴェ美術館 Musée Calvet

 クロード=ジョゼフ、カルル、オラスのヴェルネ家の画家3人の油絵やデッサン及び、彼らをモデルにした彫刻が見られる。3人の特徴としては、クロード=ジョゼフはよく知られているように海洋画家、カルルはユーモラスでコミカルな風刺画家、オラスは戦争画家。
 ここにはプロヴァンスに縁のある画家の作品も多い。

 常設展のカタログはなく、絵葉書と特別展のカタログがあるだけ。受付で断れば写真撮影OK(デッサンを除く)。付属の図書室にはヴェルネ一族に関する資料がある(事前に問合せ)。ヴェルネ関連の作品が多いため、係の人もつい「ヴェルネ美術館」と口を滑らせたほど。

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  クロード=ジョゼフ・ヴェルネ像

 

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  オラス・ヴェルネ像

 

 読み返したら、間違いを発見(引用部分は訂正済)。オラスは戦争があるたびあちこち従軍して絵を描いて、ボードレールには「オラス・ヴェルネは絵を描く軍人である」とまで言われたが、軍人ではなかった。ボードレールの影響もあったけど、恐らく "peintre militaire"(従軍画家)を誤読したのだと思われ。

 この時は、一部写真撮影OKだったけど、現在は不明。こじんまりとした美術館で、日本人観光客が珍しかったのかも。

 


ジョゼフ・ヴェルネ通り Rue Joseph Vernet

 この通りが現在の名称になったのは1881年から。とにかくヴェルネの名前が付くものを探したら、レストラン・ヴェルネやパブ・ヴェルネ、メイク学校ヴェルネが見つかった。特に画家を記念してというよりも、地名として使われている模様。途中、オラス・ヴェルネ(Rue Horace Vernet)という横道もあるが、こちらには何もない。

 

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