横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

くまのパディントン展@文化村

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 今年は「くまのパディントン」が誕生して60周年。

 原画に交じって、かわいいくまのぬいぐるみも展示されていた。色々なメーカーのものがあったけど、ダントツでかわいかったのが、ドイツ・シュタイフ社のぬいぐるみ!やはり、餅は餅屋、くまはくま屋だのう。

 

 シュタイフのぬいぐるみは日本で買うとお高いけど、ドイツでもお高かったよ。さすがに買うの諦めたよ。

 

 最初はペンでシンプルに描かれていたパディントンも、絵本や4コマ漫画になった時に、何人かの画家によってカラーに。キャラクターのデザインもだけど、色も画家によって違う。帽子とダッフルコート、長靴(はいていないバージョンも)の色がまったく違う。

 作者マイケル・ボンドのプロフィールを見て、童話だけでなく大人向けミステリも書いていたのを思い出した。グルメなフランス人探偵パンプルムース氏と、愛犬ポムフリットのシリーズだ(仏語でパンプルムースはグレープフルーツ、ポムフリットはフライドポテトの意味)。以前読んだことあるけど、英国人から見たフランス人のカリカチュアっぽいなぁと思った記憶がある。 

パンプルムース氏の秘密任務 (創元推理文庫)

パンプルムース氏の秘密任務 (創元推理文庫)

 

 

 フランスの「リサとガスパール」にも共通するけど、パディントンが動物園でゾウを見ていたり、飼い犬の散歩とすれ違ったりするのを見ると、不思議な気持ちになる。

 「お十一時」というのは、11時にお茶を頂く「イレブンジズ・ティー」のことだな。留学した語学学校でも、午前中の休憩時間にはお茶を飲んだっけ。先生たちのために用務員がお茶をいれて、小さなワゴンでカタカタと運んで来る。生徒たちは、学食でお茶を飲む。今でもこの習慣はあるのかな。


 一見、ほのぼのとした世界なんだけど、展示の冒頭で、ペルーから英国まで「船で密航」してきたと書いてあるのを見て、パディントンは外国人移民の象徴なんじゃないかという考えが頭から離れなかった。たとえば、心無い人が「クマ公」「クマの若造」とか呼んでいる場面とか、誤解から逮捕される場面とか。

 帰宅してから、公開されたパディントンの映画2本(未見)のことをググっていたら、あながち外れてはいなかった。ここ最近の移民に不寛容になってきた英国社会を象徴するような内容だったという。

 英国には若い頃、語学留学以外にも何度か行ったことあるけど、いずれも滞在期間が短かったおかげか、幸い、自分が東洋人であることでトラブルにあったことはなかった(むしろ、若い女性だったことで被る不利益や危険から身を守ることを優先していた)。日本が豊かな国だと思われていたおかげもあるかもしれない。

 それでも、留学ガイドを見ていたら、同じ英国の地方都市でも、外国人の少ない土地では、石を投げられた日本人留学生もいたとか(!)。今からほんの20年ほど前のことだ。もちろん、そういう体験談の出ていた街は留学先として選ばなかった。

 そんなわけで、パディントンのことが他人事に思えないのだ。