前回の記事(こちら)の続き。
目次
1:翻訳の通信講座で学ぶ
2:翻訳学校に通う
3:チェッカーとして働く
4:その他
第2回は、「3:チェッカーとして働く」について説明します。
3:チェッカーとして働く
英語力はあるものの、仕事としての翻訳は未経験で、英語を使った実務経験が少ないという場合、翻訳業界を覗いてみるのに、チェッカーとして働くという方法があります。
翻訳チェッカー、翻訳校正者、レビュアー、品質管理など呼び名は多々ありますが、ここではチェッカーと呼びます。翻訳会社では、翻訳が終わってから翻訳チェックを行い、それからクライアントに納品します。
チェックする内容はだいたい次の通りです。
・原文と訳文を比べ、誤訳がないか
・用語集や表記規則を守っているか
・数字や固有名詞の間違いはないか
・日本語の表現がおかしくないか、校正する
この他、業務に
・翻訳者評価を行う
・翻訳者にフィードバックを行う
が加わることもあります。コーディネーターが次回翻訳者に仕事を依頼する時の参考にするため、また翻訳者(特に新人)に次回以降の仕事での注意点を伝えるためです。
翻訳者と違い、チェッカーの場合は「未経験者可」という求人が多いです。在宅フリーランスとオンサイト勤務の両方で求人があります。翻訳会社では、翻訳は社外のフリーランス翻訳者に発注することがほとんどですが、チェッカーは社内で勤務する場合も少なくありません。
いきなり翻訳者の求人に応募するのは自信がないという場合は、チェッカーから始めるのもひとつの方法です。翻訳者がどのように訳しているのか、またコメントや申し送り事項の書き方など、参考になる点もあるでしょう。
もちろん、フリーランス、オンサイト勤務を問わず、チェッカーの場合もトライアルに合格する必要があります。
私の場合は、2つの翻訳会社に勤務しました。
1社目は大手で、取り扱うのはほぼ全ジャンル、英日だけでなく日英も担当するという、なかなかハードな環境でしたが(日英はネイティブの英文リライターがいた)、合間に仏日・日仏の仕事も担当できました。翻訳業務の基本の「き」を叩きこまれました。
2社目はIT系ローカライズに特化した会社で、英日オンリーでした。良かった点としては、TRADOSを習得できたことでしょうか。あと簡単なものですが、社外に発注するほどではない少量の翻訳を担当する機会がありました(その場合、同僚が翻訳チェックを行う)。
私がフリーランスになってからクライアント(登録先の翻訳会社)に重宝されたのが、意外にも、翻訳会社での勤務経験でした。「翻訳会社の業務フローを良く分かっているから」と言われました。そう言われてみれば確かに、翻訳会社で働いていた時のことを思い出すと、社外で翻訳したデータが、その後納品までどのような工程を経るのか、また作業中の不明点への対処法など、よく分かっている翻訳者さんは評価が高かったです。
余談ですが、翻訳者を目指して勉強していた人の中には、翻訳会社にコーディネーターとして就職する人もいます。上記2社で、そのような同僚に会いました。クライアントや社外の翻訳者とやり取りするうえで、英語だけでなく翻訳工程が分かる方が同じレベルで話ができますし、何かと好都合ということもあります。
最近は、PM(プロジェクトマネージャー)など、チェッカーとコーディネーター(翻訳者への仕事の割り振り)業務を兼任することも多いです。
フリーランスでもオンサイト勤務でも、ある程度チェッカーとして経験を積んでから、翻訳者に挑戦するというルートが考えられます。