横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

産業(実務)翻訳者になるには 1

 翻訳者になるには、色々なルートがあります。主に産業(実務)、文芸、映像などの分野がありますが、ここでは産業翻訳について、自分の経験を交えて書いてみます。翻訳スキルを身につける方法と、未経験者がどうやって仕事を見つけるか、3回に分けて説明します。

 

目次
1:翻訳の通信講座で学ぶ
2:翻訳学校に通う
3:チェッカーとして働く
4:その他

 

 第1回は、翻訳スキルを身につける方法として、「1:翻訳の通信講座で学ぶ」と「2:翻訳学校に通う」について説明します。

 

1:翻訳の通信講座で学ぶ

 近くに翻訳学校がない、または学びたい講座がない、通学する時間もないし高い授業料も出せないという場合、通信講座があります。

 メリットとしては、コストをかけずに、空いた時間や好きな時間に勉強できます。フィードバックも受けられるし、質問もできます。デメリットとしては、独学なので、添削はあるものの、自分のレベルが今ひとつ見えにくいことでしょうか。

 また課題に向かう時間を作り、毎回必ず期限までに提出するには、ある程度意志が強くないと続きません。

 

 私が通信講座で学んでいたのは、10年以上前。既に翻訳会社で勤務していたので、受講はスキルアップ目的でした。

 私の場合は、会社勤めをしながら、かつ、お金をかけたくなかったので通信講座を申し込みましたが、なかなか机に向かえませんでした。いつも提出期限ぎりぎりに慌てて提出するという感じ。私の性格にはあまり向いていなかったようです。

 通信講座の運営は、翻訳会社が母体となっていることが多いです。それでも、プロを目指す目的で受講する場合は、修了後に実際にプロデビューした人がいるか、事前に確認することをお勧めします。今なら、口コミもチェックしましょう。

 某大手のIT系翻訳講座は、はっきり言って内容が古かった記憶があります。私自身新卒で就いた仕事がIT関係なので、テキストを見て「これ昔、会社の研修で見たような資料じゃん!」と思いました。口コミを見たら、やはり「内容が古い」という声が。大手であっても油断禁物です。

 


2:翻訳学校に通う

これにはいくつか条件があります。
・翻訳学校のある都市部に住んでいること
・授業料を出せること
・通学時間を捻出できること

 

 メリットとしては、先生の訳例だけでなく、クラスメートの翻訳も見られるので、ものすごく勉強になります。独学だと、自分の翻訳がどの辺のレベルなのか分かりません。時には恥もかきますが、成長できます。不明点があれば先生に質問できるし、翻訳技術を学ぶだけでなく、業界の話も聞くことができます。

 また、人脈作りにも有効です。先生だけでなく、その後プロになるクラスメートもいます。プロデビュー前で学習中だとしても、一緒に勉強する仲間がいるのは心強いものです。今ならSNSもあります。産業翻訳ではありませんが、私が通ったある講座ではメーリングリストがあり、今でも先生やクラスメートとゆるくつながっています。

 派遣を行うエージェントや翻訳会社と提携している翻訳学校もあります。修了後、卒業生がどのくらい仕事に就いているか、調べたうえで学校を選ぶのも手です。成績にもよりますが、提携のエージェントや翻訳会社からお仕事に応募できる可能性もあります。

 ただし、通学にはある程度のお金と時間が必要です。毎回宿題も出ます。講座によりますが、かなり授業料がかかる場合もあります。また、大枚はたいたけど授業の内容や進め方など「自分には合わなかった」ということもあります。

 


 通信でも通学でも、講座で学んでみて手ごたえがあれば、「未経験者可」の求人を狙って応募すると良いと思います。数は多くないですが、実際にあります。

 翻訳の実務経験はあまりないけれど、既に特定の業種・分野で仕事し、実務レベルで英語を使った経験がある場合は、その分野での翻訳者を目指す、というルートが考えられます。その分野の知識がある、用語を分かっているというのは、大きなアドバンテージです。そのへんの話はまた後日。

 

第2回:産業(実務)翻訳者になるには 2 - 横文字の島

第3回:産業(実務)翻訳者になるには 3 - 横文字の島