「戦後日本のジャズ文化」
マイク・モラスキー著 青土社(岩波現代文庫)
戦後日本のジャズ文化――映画・文学・アングラ (岩波現代文庫)
- 作者: マイク・モラスキー
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2017/05/17
- メディア: 文庫
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今月は、ジャズについて書こう。
「呑めば、都:居酒屋の東京」で、せんべろ酒場の魅力を語ってくれた著者(ジャズ愛好家にして日本文化研究者)が、本書では第二次大戦後(戦前も少々)の日本のジャズ文化を論じている。映画や文学と絡めて分析している。
欧米人が独自のコミュニティを作っていた魔都・上海は、大戦前の日本人ジャズミュージシャンにとって、ジャズの本場・米国に渡るより近い、もう一つの「本場」だったという。戯曲・映画の「上海バンスキング」は未見なのだが、本書を読んで、見てみたくなった。
スウィングはダンス用の音楽だったのが、ダンス向きではないビバップが登場し、やがてフリージャズの時代になっていく。その辺の流れは米国も日本も変わりはないが、ライブやレコード以外の、日本独自の文化発信手段として「ジャズ喫茶」の存在が大きかった。
私のイメージだと、「ジャズ喫茶」って、音楽通のマスターがセレクトした名盤を、皆じっと黙って拝聴しているって感じ。かつては狭いアパートの部屋で、大音量でレコードをかけるわけにいかず(近所迷惑になる)、また、外国の珍しいレコードも若者には簡単には入手できなかった。その時代の名残らしい。これのクラシック音楽バージョンが「名曲喫茶」かな。
ジャズと関わりが深い日本の小説家といえば、ジャズ喫茶を経営していた村上春樹が挙げられる。それ以外にも五木寛之、倉橋由美子など、色々な作家の名前が本書で挙がっている。「あれ、この人、こんな小説書いてたんだ」と、発見があった。
意外なのが、ヌーヴェル・バーグと呼ばれたフランス映画が、日本のインテリ層に当時最先端のジャズをもたらしたという事実。ルイ・マル監督の「死刑台のエレベーター」ならマイルス・デイヴィス、ロジェ・ヴァディム監督の「危険な関係」ならセロニアス・モンクなど。偶然だが、どちらもジャンヌ・モローの出ている映画だ(追悼ジャンヌ・モロー - 横文字の島)。
米国発祥のジャズがフランスを経由して、最新のスタイルで日本に入ってくるとは!
そういやフランスも、戦前~戦後のパリで、面白いジャズ・シーンが展開されていた。米国から”輸入”されてきた後、独自の発展を遂げた。マヌーシュ・スウィング(要はジプシーの音楽がルーツ)の影響を受け、ジャンゴ・ラインハルトやステファン・グラッペリが活躍した。
ステファン・グラッペリの軽妙なジャズ・ヴァイオリンに初めてふれたのは、映画「五月のミル」だったことを思い出した(サントラCDも買った)。
米国発のジャズは日本でもフランスでも、映画や文学といった、その国その時代の芸術と絡み合って、独自に進化を遂げたのだ。
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