横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

エタニティ 永遠の花たちへ

「エタニティ 永遠の花たちへ」 Eternité
監督:トラン・アン・ユン
出演:オドレイ・トトゥメラニー・ロランベレニス・ベジョ
2016年 フランス/ベルギー映画

 

 原作はアリス・フェルネの小説『L'élégance des veuves』。女優陣のキャストが豪華だが、さらにガブリエルの母親役でイレーヌ・ジャコブが出演している(キェシロフスキ監督の「ふたりのベロニカ」「トリコロール」)。


 19世紀末期フランスのブルジョワ一家が舞台。全編ナレーションが流れ、登場人物たちの心情を代弁する。ナレーターはトラン・ヌー・イェン・ケー(「青いパパイヤの香り」)。海辺の館、花の咲き誇る庭、美しい女性や子供たちと、まるで絵画のような作品。

【ネタバレあり】

  ヴァランティーヌ(オドレイ・トトゥ)は縁談でジュールと結婚し、6人の子供をもうけるが、死産に見舞われる。やがて第一次大戦が勃発し、出征した双子の息子たちは戦死する。上の子供は男子ばかりだったが、下の子供は女の子で、エリザベットとマルゴ姉妹の成長に癒される。だがエリザベットは病死し、マルゴは修道院に入ると言い出す。修道院に入れば二度と会えない。また娘の花嫁姿を見たり、娘の産む孫を抱くこともかなわない。

 そこへ明るいニュースとなったのが、三男アンリの婚約。相手は幼なじみのマチルド(メラニー・ロラン)で、ヴァランティーヌもよく知る女性。息子の結婚と孫の誕生がヴァランティーヌを癒す。

 さらに、マチルドのいとこで親友同然に育ったガブリエル(ベレニス・ベジョ)はシャルルと結婚する。無口だが誠実なシャルルとの間に、5人の子供が誕生する。2つの家族は同じ屋敷に住み、親しく家族ぐるみの交流をする。

 

 大家族には、素晴らしい出会いや誕生も数多くあるが、一方で、予期せぬ別れも数多く訪れる。幸福そうな一家を見舞う悲劇に、胸を締め付けられる。特に、幼い子供の愛らしい姿とか、その人物の幸福な姿を見てきた後で不意な出来事が起こると。

 女性たちが主人公だからか、外の世界のことはあまり出てこない。せいぜい戦争のことがほのめかされたり、修道院が出てきたりするぐらいで、男性たちはどんな仕事をしているのかも言及されない。双子が第一次大戦で戦死したということは、物語の後半は第二次大戦に向かっている時代のはずだが、作品には全然出てこない。

 ひたすらある一家の結婚や子供の誕生、成長といった女性目線の日々の出来事を描くだけなのだが、いつしか家族に感情移入してしまい、物語に引き込まれる。今の医学なら助かった病気で子供が命を落としたり、進路選択に修道院があったり(あまり一般的ではない)、現代とは環境が違うけれど、人の暮らしや家族というものは、基本的には変わらないんだなと思わされる。


 以下、余談。
 映画の中で、時代もあってか女性たちが多産なことに驚いた。当時は乳幼児死亡率も高かったし、避妊もしなかった(カトリックの国だから)というのもあるが。

 うちの両親はどちらも7人きょうだいで、両方の祖母も多産だったと言える。どちらも農家だったから、子供にご飯を食べさせ、世話をし、家事をして、合間に農作業もやって……フル回転だったわけだ。映画では上の子供たちが下の子供たちの面倒を見ていたから、たぶんうちの一家もこうだったんだろうな。

 正月やお盆は、本家にたくさんの親戚が集まり、私は年齢の違ういとこたちとめいっぱい遊んだ。今思うと、集合写真でも撮っておけば良かった。きっと祖父母は、孫が多すぎて混乱したに違いない。
 国も文化も暮らしぶりも違うけど、祖母のことを思い出してしまった。


 トラン・アン・ユン監督といえば、最近だと日本では「ノルウェーの森」が有名だけど、私としては「青いパパイアの香り」「夏至」をお勧めしたい。前者は使用人の少女が大人になり、初恋の人と結婚するまでを描き、後者では三姉妹の物語を描いている。時間の流れ、家族の物語というのが、本作にも共通する。 

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