横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

マイビューティフルガーデン / 未来よこんにちは

 ギンレイホールで2本立て。

「マイビューティフルガーデン」This Beautiful Fantastic
出演:ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ、トム・ウィルキンソン
監督: サイモン・アバウド
2016年 イギリス映画 

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 植物が苦手な主人公ベラ。アパートの庭をほったらかしにしていたら、家主から「1か月以内に元通りにしないと、退去だ」と言い渡される。隣人アルフィーの助けを借りて、ガーデニングに挑戦する。

 

 ワタシ、Eテレの「猫のしっぽ、カエルの手」を見るんだけど、ベニシアさんのお庭とか素敵なんだけど、田舎出身だから、庭仕事の大変さはよ~く知っている。植物が苦手じゃなくとも、生垣や植木を剪定したり、年中手がかかるんだよ~(遠い目)。

 不思議キャラな主人公、ユニークな職場や周囲の人たちという設定は、イギリス版「アメリ」みたいだな~と思った。恋のお相手の、発明家の青年ビリーもちょっと変わり者だし。

 

 料理人ヴァーノン役でアンドリュー・スコットが出演している! そう、BBC「シャーロック」のモリアーティ。本作では、双子の娘がいるシングルファザーという設定。善人役で、しかも柔らかい笑顔。良いじゃないですか。ほお~、この笑顔で「シャーロック」ではモリーを落としたのね。

 実年齢より若く見えるから(今40歳)、ヒロインの恋人役?と最初は思った。さすがに初対面のビリーから「ベラのお父さん」呼ばわりされるのは……いや、せめて「お兄さん」と呼んであげて……(40代の主張)。

 ベラ役のジェシカはドラマ「ダウントン・アビー」に出ていた若手女優。映画では恋人役ではなかったけれど、アンドリュー・スコットとお似合いかも……と思ってたら、舞台版「ハムレット」(アルメイダ劇場)ではハムレットとオフィーリアを演じている! うわぁ、すごく見たい(この2人を恋人役でキャスティングするとは、同じこと考えた人いるのね)。

 ベネディクト・カンバーバッチハムレットを演じて話題になったけど、アンドリュー・スコットハムレット、ものすごく繊細そうな感じで、これはまたこれで見てみたい。

 シェイクスピアつながりで:ハムレット、東北に立つ - 横文字の島

 


「未来よ こんにちは」L'Avenir
監督:ミア・ハンセン=ラヴ
主演:イザベル・ユペール
2016年 フランス映画 

未来よこんにちは [DVD]

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 高校の哲学教師ナタリー(イザベル・ユペール)には、夫と独立した2人の子供、離れて暮らす老母がいる。充実した毎日を送っていたが、夫には離婚を切り出され、老母は施設へ入れることになる。やがて母も他界し、気づけばおひとり様に。

 「猫アレルギーなの」と言いながら、施設に入った母が残した黒猫パンドラを世話している。元教え子の哲学者ファビアンの暮らすアルプスを訪れれば、外へ出て戻らないパンドラを心配する。なんのかんの言って大事にしているし、もう、このまま猫を生活の伴侶にすればいいじゃない……と思っていたら、最後の方で猫の引き取り手が見つかって、譲渡する。あれれ? 猫ブームの日本だったら、たぶん猫を伴侶にするぞ。

 

 主人公も夫もただの高校教師ではないらしく、本を執筆している(しかも教科書に採用されたり)。かつて教え子には高等師範学校に進学するよう助言したし、哲学教師の世界のエリートみたい。

 おひとり様になった後は、日常を淡々と描いている。劇的なことは起こらないが、それでも、新学期が始まったり、娘に子供が生まれたり、時間の経過と共に変化が生じる。クリスマス(日本のお正月に匹敵する)は子供たちと孫に囲まれてにぎやかに過ごし、幸せそう。

 対して、アパートに立ち寄った元夫は、一人ぼっちのクリスマス。てっきり、ディナーに呼ばないの? と思ったけど、そのまま追い返す。もしかして元夫は、お呼ばれをひそかに期待してこの日立ち寄ったんじゃないかと思ったんだが……(違うかな?)。

 監督は、エリック・ロメールの後継者と言われている。ああ、なるほど。だから劇的な事件とか起こらないのか。淡々とした描き方がかえってリアル。

 

イザベル・ユペールの出演作:

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