横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

追悼ジャンヌ・モロー

 フランスの映画女優ジャンヌ・モローが亡くなった。享年89歳。

f:id:Iledelalphabet:20170801093414j:plain


 キャリアが長く、出演作も多いので、けっこう見ていると思う。男に媚びない、口元をへの字にしたヒロインて、当時珍しかったと思う。出演作のリストを見ながら、覚えている作品を並べてみる。

 



 若い頃の作品で有名なのは、ルイ・マル監督の「死刑台のエレベーター」か。マイルス・デイヴィスの音楽が印象に残っている。男を破滅に追いやるファム・ファタルの典型。ルイ・マル監督作品では「鬼火」で再出演を果たしている。「死刑台のエレベーター」とどっちを先に見たのか思い出せないが、フランソワ・トリュフォー監督の「突然炎のごとく」では、青年たちと自転車で軽やかに駆け抜ける姿がチャーミングだった。

 ラクロ原作の小説を現代風に映画化したロジェ・ヴァディム監督の「危険な関係」では、ジェラール・フィリップ演じる主人公の妻役だった。この小説は、後にフリアーズも映画化しているし(ジャンヌ・モローと同じ役はグレン・クローズ)、韓国でも映画になり、ぺ・ヨンジュンが主演していた。ロジェ・ヴァディムの演出が軽かったのが残念だが、3作の中でも、ジェラール・フィリップのプレイボーイぶり、ジャンヌ・モローの悪女ぶりはハマっていた。

 リュック・ベッソンの「ニキータ」では、ヒロインの女殺し屋にエレガンスを教える役だった。野獣のようだったニキータアンヌ・パリロー)が美しく変身し、「さすがフランス!」と感嘆した。

 最後に見たのは2012年製作の「クロワッサンで朝食を」だった。パリで孤独に暮らすエストニア出身のわがままな老婦人。世話係のエストニア女性と徐々に打ち解けていく役どころだった。

 とにかく、映画界の様々な巨匠と仕事をしたすごい人なのだ。ちょこっと出演して、あまり覚えていない役も含めたら(「現金に手を出すな」とか)相当な数の作品に出ている。今、確認のため仏語版Wikipediaを見て、圧倒されている。これを機に、どこかでリバイバル上映してくれないだろうか。合掌。