横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

キング・アーサー

キング・アーサー」King Arthur: Legend of the Sword
監督:ガイ・リッチー
出演:チャーリー・ハナムジュード・ロウ


 今まで何度も映画化されている「アーサー王伝説」。ミュージカルになった「キャメロット」とか、王妃グウィネヴィアと騎士ランスロットの恋を描いた「トゥルーナイト」とか、ディズニーアニメとか。色々な形で映像化されてきたが、はたして今回、ガイ・リッチーはどんな風に料理したのか? わくわく。

 ストーリーは単純明快。先日の「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」の方が、よっぽど複雑だったよ。親子の話に加えて、恋愛、友情、姉妹の話、笑いあり、涙ありと、起伏に富んでいた。本作はかの「アーサー王伝説」を元にしているので、結末は大体予想がつくんだけど、それにしても、振り返ると道はまっすぐだったな、と。

 


 ガイ・リッチーは、男同士の物語が好きなんだな。「シャーロック・ホームズ」しかり、「コードネームU.N.C.L.E.」しかり、友情と闘いの”男の世界”が。

 聖剣エクスカリバーを持つと、アーサーは無双になり、ヴォーティガンは沼の妖魔との取引により、ダースベイダーになる。ん? 「アーサー王伝説」って、そんな話だったっけ?

 キャストが多国籍で、この時代のイングランドにさすがにアフリカ人と東洋人はいなかったんじゃ……!? あと、台詞の中に「ナポレオン」という言葉があって、いつの時代なんだろう? ロンディ二ウムはロンドンの古名だと思うけど、時代設定はその頃じゃないのか?

 多少のアレンジは構わないが、基本設定は踏まえて欲しいな~。たとえば、元の伝説では、剣を湖に投げ捨てた後、湖面から腕がにゅっと出てきて、湖の乙女が剣を返す場面がある。映画の中で、運命の重責に耐えかねたアーサーが剣を湖に放り投げたのは良いんだけど、どうして湖でなく、道のぬかるみの中から戻ってきたのか? 分かりづらいし、伝説とはニュアンスが変わるかもしれないが、普通に湖から戻ってきても良いじゃないか? 

 青年アーサーが王になるまでを描く……はずが、魔術師マーリンはどうした!?回想の場面でちらっとしか出てこない。マーリンの代わりってことで、若い女魔術師を出したのかな。アーサーの異父姉モーガン・ル・フェイのことかとも思ったけど、そんな話はまるで出てこないし。貴女、誰!?

 元サッカー選手のベッカムが出演していて、すぐに分かったよ。アーサーが岩に刺さった聖剣を引き抜く場面で、ちらっと出演。台詞つき。もしや、ガイ・リッチーベッカムに、かつてのエリック・カントナ(元サッカー・フランス代表。引退後は俳優に転身)のようなことを期待しているんだろーか!?

 なんというか、映画全般「コレジャナイ感」が半端ないのだった。


 以下、余談。
 昔、フランスと英国で「アーサー王伝説」ゆかりの場所を巡ったことがある。なぜ、イングランドの伝説であるアーサー王の舞台が、フランスにもあるのか? それは、騎士道文学の開花と共に、クレティアン・ド・トロワのような吟遊詩人が登場して、アーサー王や聖杯伝説を物語ったから。

 ケルト文明の名残があるフランス・ブルターニュ地方には、イングランドに負けないくらい、アーサー王伝説ゆかりの場所があるというわけ。元々、アーサー王伝説の起源には、ケルトの英雄物語も含まれているというし。ブロセリアンドの森は、フランス版「アーサー王伝説」の舞台として観光地化されている。

 ただし、オフシーズンのフランスで、車を使わずに辺鄙な土地を目指すのは不可能で、ブルターニュの場合は、電車やバスやレンタサイクルで行けるところだけ、ちょこっと足を踏み入れるのがせいぜいだった。フランス版ストーンヘンジこと、カルナックの巨石群とか。

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  フランス・ブルターニュの「アーサー王伝説」ポストカード

 対して、イングランドの方は夏季だったのもあり、結構あちこち回れた。ウィンチェスターとティンタジェルへは円卓を見に行き、アーサー王の墓があると言われたグラストンベリー修道院にも足を運んだ。

 こちらは実家に置いてある「アーサー王伝説」関連本。これは一部。フランスやイングランドで、観光パンフレットに毛の生えたような薄い本が色々売っていたけれど、そういうものもちょこちょこ買ってきた。日本語だと、やはり高宮利行先生の本かな。
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 というわけで、若い頃、英仏の各地を回ったのは、何もシャーロック・ホームズのためばかりじゃなく、アーサー王伝説のためでもあったのだ。今回、ガイ・リッチーの映画を見てがっかりしたのを、ご理解いただけただろうか。オイラの「わくわく」を返してくれ!