横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

フランスのホームズ本 児童書とYA

 先日の月例会(こちら)のお題は、児童&YA向けホームズ本。講師は日暮雅通さんと北原尚彦さん。

 紹介されたのは日本語オリジナルの本と、講師のお二人が英語翻訳者ということで、英米からの翻訳本(未訳本も)が主。「BS通信」で新刊情報は見ていたけれど、改めて「こんなに日本で出ていたの!?」とびっくり。今の子供たち(大人も)、追いかけるの大変!

 フランスのホームズ本にも、いくつか児童書があるのだ。でも、日本語や英語に翻訳されていないんだよなー。

 



 ということで、備忘録も兼ねて簡単に紹介する。将来どこかで出ないとも限らないので、個別の本でなく、まとめてざっくりと。

 ベアトリス・ニコデム(Béatrice Nicodème)という児童文学作家がいて、何作かホームズ・パスティーシュを発表している。ベイカー街イレギュラーズのウィギンズを主人公にしたシリーズで、フランスでは児童書が6冊(再録本は除く)、YAが1冊出ている。

Wikipedia(仏語)にページがあるので、書名はこちらを参照。

Wiggins (série littéraire) — Wikipédia


 イレギュラーズが主人公の作品は数あれど、こちらは団体でなく、ウィギンズが単独で少年探偵として活躍するのだ(フランス人て、やっぱり個人主義なのか?)。児童書ではウィギンズは小学生~中学生くらいの年齢。読者に合わせているのだろう。

 個人プレーだけど、時々イレギュラーズに協力してもらったり、ホームズやワトソンも助けてくれる。孤児ではなく、あるお屋敷に住み込みで働く母親がいるという設定。

 一方、YAの方では、ウィギンズは20歳の青年になっている。ホームズ物語の”大空白時代”、つまりホームズが死んだとされている時期で、昔のようにホームズに助けてもらうことはできない。事件の舞台は寄宿学校で、雑用係として潜入する。捜査の一環で生徒らの話を聞くウィギンズの姿は、まるで立場を超えた兄貴分のよう。

 児童書の方は明るいタッチだったのが、YAの方はすっかりシリアスで重い雰囲気。19世紀の英国を舞台にしているけど、今のフランスの学校も、似たような問題を抱えているのだろうかと思ってしまった。