横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

映画版 Les Brigades du Tigre

「Les Brigades du Tigre
監督:ジェローム・コルノー
出演:クロヴィス・コルニアック、ジャック・ガンブラン、ダイアン・クルーガー
2006年 フランス

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 この映画を知ったのは、大ファンである俳優ジャック・ガンブランが出演していたから。しかも珍しく犯罪者の役で、日本未公開。ようやく、鑑賞できた。
 ただ、字幕スーパーなしなので、俳優が小声でささやくと(いや、それだけじゃなく、こちらのリスニング力の問題でもあるが)、正直聞き取れない。おおまかな筋しか分からないので、細かい部分はネット情報と想像力で(!)補った。

 



<あらすじ>
 20世紀初頭のパリ。アナーキストのジュール・ボノー(ジャック・ガンブラン)一味が、銀行の現金輸送車を襲撃した。ヴァランタン警視(クロヴィス・コルニアック)はアジトを突き止めるが、ボノーに逃げられる。ボノーにはアナーキスト仲間である愛人(ダイアン・クルーガー)がいたが、彼女の正体は、ロシアから来仏中のボルコンスキー公爵夫人だった。
 夜会が開かれ、ヴァランタンはテラソン警部、プジョル警部、新入りのビアンキらと共に警備につく。ボルコンスキー公爵夫妻が会場に現れるが、建物の外ではロシア人やアナーキストが集まって騒いでいた。
 ボノーは潜伏場所が見つかり、警察に包囲され、激しい銃撃戦の末に死亡した。ボノーの車からは、麻薬らしき注射器が見つかる。
 パリ市内の劇場では、ロシアの歌劇団がオペラ公演の準備をしていた。演目はリムスキー=コルサコフの「イワン雷帝」。公演は、ボルコンスキー公爵も鑑賞する予定だった。水面下で、ある陰謀が進められていた。
 一方、ヴァランタンたちの捜査には、警察上層部から妨害が入る――。


 ええと、100パーセント聞き取れたわけじゃないので、ストーリーはこんな感じかな。もう、どこからツッコんでいいか分からんよ。

 アナーキストのジュール・ボノーが仲間と銀行強盗をはたらき、「自動車を使った世界初の犯罪」と騒がれたのは史実。まさか、ジャック・ガンブランが演じる日が来るとは……! でもって、その愛人がロシアの貴婦人って。身分の差が……無理でしょ!
 史実の通りなのだが、あっという間に潜伏場所を囲まれ、激しい銃撃戦と爆破の末に壮絶な最期を迎える。ジャック・ガンブラン目当てで見たのに、早々に出番が終了。

 そもそも、ヒロインが自由に出歩きすぎ。彼女の身分なら、いくら仏語が流暢でも、外国だし、必ず誰かが一緒について行くでしょ。特捜班と並んだポスターを見て、「あれ、女性刑事?」と思ってしまった。もう少し違うデザインでも良かったんでは。

 パリ警視庁が舞台なので、鑑識課長のベルティヨンが登場する。冒頭、制服姿なので警察学校の生徒もしくは新人警官の研修だと思うが、若者たちが人体測定を学んでいるのだ。実際に頭の大きさを計測している! 人体測定の写真は今も残っているけど、映像で見られることは滅多にない。 
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 また、後半では、注射器を見つけたビアンキが、鑑識課のベルティヨンのところに持って行って、分析を依頼するのだ。おおう、まるで科捜研じゃん! 映画を見ていていちばんテンションが上がったのはここの場面でした(別にベルティヨンのファンじゃないんだけどね……)。

 ヴァランタンが、女性(それも貴婦人)の面前でぷかぷか煙草を吸いすぎ! この辺のお約束事は、フランスでもロシアでも、ヨーロッパなら変わらないはずなんじゃないかな。なんか釈然としない。

 ややぽっちゃり体形のテラソンがサバット(フランスのボクシング)の達人というのが意外。かたや、プジョルがステッキを使った格闘術(canne de combat)の達人というのは、「機動班」の得意技の史実(ソースは下記)に基づいているのかも。プジョルのステッキには刃が仕込んであった。

Brigades Régionales de Police Mobile — Wikipédia


 ネット情報によると、外交上の任務を帯びた公爵がロシアから来仏していたのは、三国協商(英仏露協商)とも関係があるらしい。


 本作は、フランスで1974~1983年に放送されていたTVドラマの映画化。TVドラマはかつて日本でも放送されたらしい。邦題が分からないのだが、「フレンチ・フィルムノワール・アンソロジー」というCDに「タイガー警察隊」なる名前が登場するが……? かたや、本作の仮題として「虎の機動隊」という名前も見かけた。はてさて。

 タイトルの「Les Brigades du Tigre」というのは、凶悪犯罪が増えていた20世紀初頭のフランスで、内務大臣ジョルジュ・クレマンソーの発案で警察内に誕生した部署で、「特捜班」のような意味か。「Brigades mobiles」とも呼ばれ、それだと「機動班」みたいな意味になる。
 「Tigre(虎)」はクレマンソーのあだ名で、そこからこの名称がついた。映画のレビューで「まるでフランス版『アンタッチャブル』だ」(←ケビン・コスナー主演作)と書いてあったが、映画のイメージとしては結構近いかも。

 モーリス・ルブランアルセーヌ・ルパン・シリーズに『特捜班ビクトール』(Victor, de la brigade mondaine)という作品がある。「brigade mondaine」は「風紀・麻薬捜査班」なので、「特捜班」だとカッコいいけど、ちょっと意味が違う。

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