横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

幹事のアッコちゃん

「幹事のアッコちゃん」
柚木麻子著  双葉社

幹事のアッコちゃん

幹事のアッコちゃん

 

 
 「ランチのアッコちゃん」「3時のアッコちゃん」に続く第三作。若手会社員の背中を押して(いや、叩くと言った方が正しいかな?)くれる、敦子ことアッコちゃん。今回もビシッと厳しい、だけど愛ある言葉を放ちます。

 もう一人のヒロイン、三智子の成長ぶりも著しいのだが、派遣社員契約社員→正社員となった前作に続き、次の試練が用意されている。ついに笹山とゴールインし、今度は働くミセス、そしてリーダーとして壁にぶつかる。

 


 前作に登場したキャラクターのその後が描かれているのが嬉しい。ビールガーデンのレミは1作目に登場しているし、名前は書かれていないけど、ブラック企業を辞めた女性というのは、2作目のスムージーの彼女かな。

 "アッコちゃんのアンチ"こと、もう一人のアッコちゃんでもあるライターの温子。アッコちゃんと同い年で大学も一緒。もしかしたら、社会の荒波にもまれる前の学生時代に出会っていたら、いい友達になれたんじゃなかろうか。コンサルタント会社にいたのだから、温子もかなり優秀だと思う。温子の登場は、病気で弱った、スーパーウーマンじゃないアッコちゃん像を読者に見せるためだろうか。

 このシリーズは、派遣社員とか、就職難とか、ブラック企業とか、長時間労働とか、今の時代の仕事の問題を切り取るお仕事小説でもあり、同時にごはん小説でもある。グルメではない、ランチやティータイム、温めてくれるポトフ、身体にいいスムージー、手作りの梅干しなど、読んでいるだけでおいしそうなのだ。昔から「腹が減っては戦はできぬ」と言うように、しっかり食べることは、良い仕事をするうえで大事なんですよというのが土台にある。だから、読者が励まされるんだろう。

 本書でシリーズは完結なのかな。もし続編があるなら、M&Aを成功させた三智子には、管理職とか、あるいはワーキングマザーとしての奮闘とか、次のステップが待っている気がする。そして神出鬼没のアッコちゃんは、相変わらず世界を飛び回っているのだ。きっと。

 

ランチのアッコちゃん (双葉文庫)

ランチのアッコちゃん (双葉文庫)

 

 

3時のアッコちゃん

3時のアッコちゃん