横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

今年も万国博覧会

 全国大会にて。国書刊行会さんのブース

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「インド篇」のPOPで、下のヴァン・ダイン本を隠してしまい(汗)
 この後、POPの位置はずらしました。「中国篇」や、フランスのレウヴァンの本もPOPを添えて頂きました。写真からはみ出ていますが、右側に『シャーロック・ホームズ完全ナビ』もあります。

 さて、今年のホームズ大賞は植田弘隆さん『文人、ホームズを愛す』(青土社)でした。奨励賞は、『モリアーティ』の翻訳で(それ以外にもたくさんホームズ本を出されていますが)駒月雅子さん。審査員特別賞は、長年の研究活動に対して、渡辺峯樹さんに。そしてそして、翻訳作品に贈られる延原賞は、カミ『ルーフォック・オルメスの冒険』(創元推理文庫)でした。おめでとうございます!

 


 『ルーフォック・オルメスの冒険』を翻訳された高野優先生が会場にいらっしゃいました。会場内で一番興奮していたのは私かもしれません。

 だってだって、私みたいな駆け出しのフランス語翻訳者にとって、神様みたいな存在ですよ!(カミにひっかけた訳じゃないよ)フランスのミステリを読んできた人間は皆、高野先生の翻訳のお世話になっているはず。

 サインを貰う人の行列を見て、『ルーフォック・オルメスの冒険』を家に置いてきたことを激しく後悔しました。せめてご挨拶をと思いきや、今度は名刺を忘れたことに気づき……。

 ふと、国書刊行会のブースに目をやると、昔自分の翻訳したレウヴァンの『シャーロック・ホームズの気晴らし』が並んでいるではないか。慌てて一冊買い求め、高野先生のところへご挨拶に。

 よく、駆け出しの翻訳者が最初に一冊翻訳出版して、以後それを名刺代わりにしてあちこち企画を売り込む、なんてことを言いますが、文字通り、訳書を名刺代わりにした私です。

 高野先生も、編集者の方も、レウヴァンの本のことはご存じだったようで、嬉しかったです。レウヴァンは、過去に『そそっかしい暗殺者』が日本でも出ていますしね。カミもそうですが、フランスではホームズ・パロディ(パスティーシュ)がたくさん出ています。まだまだ私なんぞ高野先生の足元には及びませんが、お目にかかれて良かったです。

 まだ私が大学生だった四半世紀前、フランス語翻訳の通学講座はバベル翻訳学院(当時)しかありませんでした。インターネットもない時代で、ネット上の口コミ情報なんてありません。情報取集するには、説明会に直接行くしかありませんでした。その時の講師は高野優先生。説明会に集まった人たちに、優しく説明して頂きました。ただ、授業料がとても高く、大学生だった私は通信講座を選んだ覚えがあります。

 後に(学費の安い)日仏学院で翻訳を学びましたが、バベルを離れた高野先生が別の場所で翻訳教室を開いてらしたことを、先輩から聞きました(同業者のネットワーク)。大学の同級生がやはり翻訳者になったのですが、彼女は高野先生のお弟子さんです。ことによったら、私も高野先生のもとで学ぶ機会があったのかもしれません。

 そういえば、昨年のホームズ大賞は深町眞理子さんでした。出版翻訳の中のホームズというジャンルではありますが、長年活躍されたベテラン翻訳者の方々が表彰されるというのは、とても嬉しいものです。

『ルーフォック・オルメスの冒険』の感想はこちら

iledelalphabet.hatenablog.com

 

ルーフォック・オルメスの冒険 (創元推理文庫)

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機械探偵クリク・ロボット 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

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文人、ホームズを愛す。

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